ガソリンエンジンの重要部品だけどディーゼルには不要! 「スパークプラグ」って何? (2/2ページ)

ただ火花を飛ばしているだけじゃない!

 ところで本題の「いい火花」だが、火花のクオリティは中心電極の細さで決まる。つまり、電極の径が細ければ細いほど火炎伝播スピードが早くなるのだが、中心電極は高温・高圧のガスで消耗(蒸発)し、さらに燃焼時に発生するリンや硫黄などの化合物で酸化消耗するので、定期的な交換が必要。

 同じ材質で考えると、電極を細くすると消耗→寿命も短くなるし、電極を太くすると、着火性能は悪くなるので、頭が痛い……。

 したがって、高性能プラグを作るには、融点が高くて、酸化しにくい金属が不可欠で、だからこそ中心電極には、ニッケル合金や白金、イリジウム等の貴金属が使われている。

 具体的にいうと、ニッケル合金の融点はおよそ1400度。白金(プラチナ)は約1800度。そしてイリジウムは2400℃以上。この素材の違いがプラグの寿命に大きく影響する。ニッケル合金タイプは普通乗用車で2万kmが目安。白金やイリジウムの長寿命タイプだと10万kmまで使えるものもある。

 また、単に寿命が延びるだけでなく、白金プラグの中心電極の先端径はニッケル合金の半分以下で、イリジウムにするとさらに先端径は白金の半分に。電極が細くできるので、着火性能に優れ、レスポンスや燃費の向上、アイドリングの安定などのメリットがあり、イリジウム=高性能プラグとして知られるようになってきた。

 もうひとつ、プラグには熱価の違いもある。熱価というのは燃焼ガスから受ける熱を逃がす能力の違いのこと。

 高回転を多用するようなエンジンは、熱を逃がしやすい「冷え型」を選び、実用域しか使わないようなエンジンは熱を逃がしにくい「焼け型」がマッチする。熱価の高いプラグを装着したからといってパワーアップするわけではなく、チューニングしてパワーアップしたときに、熱価の高いプラグが必要になる。

 エンジンの特性や使用条件に対し、熱価の高いプラグをつけると、プラグにカーボンがたまってくすぶりの原因になり、逆に熱価が低すぎるとプラグ温度が上がりすぎ、異常燃焼(プレイグニッション)を起こすこともある。

 エンジンがノーマルなら、純正プラグと同じ熱価にするのがベスト。ブーストアップなどパワーアップを図ったときは、実績あるチューニングショップに相談して熱価を決めよう。

 なお、スポーツ走行を楽しむクルマや小排気量車など、エンジンを高回転で常用するクルマは(同時点火コイル車も)、プラグの寿命が短くなるので、早め早めの交換を。

 とくに軽自動車は、基本的にエンジン回転数が高い時間が長く、より多く火花が飛んで電極の消耗が早いため、普通車の半分の距離でプラグ交換をしたほうがいい。

 また、燃焼室が平べったく縦長なロータリーエンジンは、ひとつのローターに2本のプラグを使っている。それでも混合気を完全に燃やすことは難しく、プラグの寿命も短い……。

 そして余談だがディーゼルエンジンにはプラグがいらない。

 ディーゼルエンジンは、空気の体積を20分の1まで圧縮させる。空気は圧縮すると高温になり、ディーゼルエンジンは、空気を圧縮させることで600℃以上の高温になり、そこに燃料を噴射して自然発火させている。自然発火するので、プラグで電気火花を飛ばす必要がないわけだ(※ガソリンエンジンの圧縮比はほとんどが11以下。ディーゼルエンジンは20前後、もしくはそれ以上がほとんどだが、マツダの低圧縮比ディーゼルなどもある)。


藤田竜太 FUJITA RYUTA

モータリングライター

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