AMGにふさわしい圧倒的なパフォーマンス
今回のモデルも、すでに販売されているGLC 63 S E PERFORMANCEや、C 63 S E PERFORMANCEと同様のパワートレイン構成をもつ。
パワートレインを構成する直列4気筒ターボエンジン「M139」は、わずか2リッターの排気量から最高出力476馬力、最大トルク545Nmを発生する。このユニットのターボチャージャーは「エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー」と呼ばれており、F1で用いられている技術が採用されている。
このターボチャージャーの軸は、400V電気システムを電源とするモーターに接続されており、最大17万5000rpmもの回転数を誇る。これにより、ターボチャージャーが排気によって回転するまでの間、モーターの力でターボ過給を行うことができるため、エンジンの全回転域においてブースト圧が途切れることはなく、従来のターボシステムよりダイレクトな加速を実現する。
こうして発生した動力は、トルクコンバーターの代わりに湿式多板クラッチを搭載する9速オートマチックトランスミッション「AMG スピードシフト MCT」を介して効率よく各車輪へと伝達される。
ガソリンユニットと組み合わされるバッテリー&モーターは後輪の車軸周辺に備わる。ピーク出力で204馬力を発生するこのシステムは、2速の変速機と電子制御式リミテッドスリップデフを介してリヤの車軸を直接駆動する。こうして重量のあるエンジンをフロントに、モーター&バッテリーをリヤに置くことで前後重量配分を適正にすることが狙いだ。
また、このユニットに使われるバッテリーにもF1の技術がふんだんに使われている。このバッテリーは、加速時には高出力を瞬時に発生し、減速時には大幅な回生を行うために、急速に充放電ができることを目指しているのが特徴だ。だが、容量にも妥協はない。あくまでマイルドハイブリッド的にエンジンの補助をする目的で設計されているにも関わらず、電力のみで16km程度を走行できるほどの容量を備えている。そんなバッテリーのパフォーマンスを支えているのは独自の冷却技術だ。非伝導性の液体ベースの冷却剤をバッテリー内に循環させ、個別のセルを適温に保つことで、いつでもベストな性能を発揮できるようになっている。
こうしてふたつの動力源から生み出された動力は、パフォーマンス志向の電子制御式4輪駆動「4MATIC+」が瞬時に状況を判断して、適切に4輪へと分配される。
また、AMGモデルに採用される「AMG ダイナミックセレクト」では8つのモードごとに、パワートレイン以外にも駆動システムとトランスミッションのレスポンス、ステアリング特性、サスペンションの減衰特性、サウンドを変更することも可能だ。
このなかには「AMGダイナミクス」と呼ばれる高度な車両制御システムが含まれており、速度や横方向加速度、ステアリングの舵角、ヨーレートなどの情報をセンサーから取得し、それによってドライバーの望む挙動をモードごとに自在に作り出すことができる。具体的には、「Comfort」と「Electric」「Battery」モードではアンダーステアで安全な挙動を作りだす。そこから「Sport」「Sport+」となるに従ってオーバーステア抑制が緩和され、「Race」モードではわずかにオーバーステアな挙動にまでに変化するといった具合だ。
このほかにも、実際の排気音を車内のスピーカーから再生する「AMG リアルパフォーマンスサウンド」など、気分を高めてくれるような装備を多数備えている。
多くのテクノロジーがたっぷり詰まったGLC 63 S E PERFORMANCE クーペ。その価格は1811万円となっている。
ハイセンスなクーペSUVとハイテクノロジーが融合を果たしたこのモデル。こうしてまたひとつ選択肢を増やしたメルセデスAMGの63系モデルの、今後のさらなる展開が楽しみだ。