軽量ボディと高出力エンジンの組み合わせが速さの決め手だ
ここまでは、どちらかといえば直線番長的な(もちろんカーブでも安心安全だが)動力性能を持つ大パワー、大トルクを誇るミニバンを紹介してきたが、じつは速いだけでなく、ハンドリング性能面でスポーティカーに匹敵するミニバンもないわけではない。
●スバル・エクシーガ2.0GT 225馬力
その筆頭が、2008年に登場した7シーターパノラマツーリングをコンセプトとしたスバル・エクシーガだ。スバルはAWDのスポーツモデルでも有名だが、なんとエクシーガ2.0GTには水平対向2リッターターボ、225馬力、33.2kg-mユニットを搭載。
駆動方式はもちろんAWDで、ミッションはダウンシフトグリッピングコントロール付き5ATを組み合わせ、エクシーガとしては唯一のSIドライブ(I/S/S#)を搭載。
ミニバンとしては軽量なボディに225馬力、33.2kg-mだから速いのは当然として、人車一体感、路面とのコンタクト感の強さ、スポーティなドライビングフィールにおいて、ミニバンの常識を超えていたのも本当だった。乗り心地はかなり硬い印象だったと記憶するが、山道でもとびっきり速く、運転、操縦を楽しめるミニバンでもあったのだ。
●三菱 シャリオリゾートランナー 230馬力
1991年に発売された三菱のコンパクトミニバン、シャリオに、1995年5月に加わったモデルが、シャリオリゾートランナーGTだ。
何しろパワーユニットは初代ランサーエボリューションと同じ4G63型ターボエンジン、230馬力(MT、ATは220馬力)。駆動方式はもちろん三菱自慢のフルタイム4WD。ATのほか5速MTも用意されていた、まさに全天候型の走るためのミニバンだった。
車重は1500kg程度だから、230馬力でもスポーティカーのような強力な加速力を見せつけ、その上で”シャリオ・エボリューション”と呼んでいい、当時の”7人乗りミニバン世界最速”とも評された全方位のパフォーマンスを発揮してくれたのだから、現在のデリカD:5とはまったく異なる、今となっては超希少価値ある1台なのである。
●3代目ホンダ・オデッセイ 200馬力
上記の大パワー、大トルクのミニバンのほか、”ミニバンのカタチをしたスポーティカー”と、それこそライバル自動車メーカーのミニバン開発陣も評したスポーティミニバンとしてホンダ・オデッセイ、それも3代目アブソルートがある。
1~2代目のまっとうなミニバンスタイルから全高1550mmの低全高ミニバンに変身したオデッセイであり、ホンダらしさ全開の1台だった。パワーユニットはK24A型で、標準車の160馬力に対してアブソルートは200馬力ではあったものの、5速ATを介した走りはホンダ魂が宿るスポーティカーそのもの。
5代目の登場時に開発陣から聞いた話では、現存率(ファン)がもっとも多いオデッセイだったそうだ。「クラスを超えた加速力の持ち主」という点ではちょっと違うが、低重心を生かしたキレ味ある曲がりが得意な走りのテイスト、山道でもカッ飛べる操縦性は、ミニバンを買わざるを得ないスポーツドライビング愛好家から絶賛された1台でもあった。
いずれにしても、現行日産エルグランド3.5リッターV6モデルを別にすれば、クルマの電動化シフトが進むいま、そうしたV6ガソリンエンジンを積む大パワー、大トルクを誇る国産ミニバンは、もはや絶滅危惧種になったともいえる。