ダイハツは新しいモビリティカンパニーとして再生できるのか?
また、ダイハツの認証不正については短期開発へのプレッシャーが、その遠因であったという指摘もあるが、再発防止を最優先した開発スケジュールに変わるという。そのため、当面の目途としては開発期間が1.4倍程度に伸びてしまうという。そうした愚直な姿勢で信頼を回復しようというわけだ。
もっとも、そう簡単にはいかないだろう。井上社長は、就任から一か月の間、ダイハツ社内だけでなく販売店やサプライヤーとコミュニケーションをとるほか、コールセンターに届くユーザーの声なども目にしてきたという。生産が止まったことでサプライヤーだけでなく、地域社会の経済活動にもマイナスとなった自治体との話し合いもあったということだ。
そのなかには、温かい内容もあれば厳しい言葉もあったという。
それは当然だ。いったんは政府により全車出荷停止という処分になってブランドが、どれほど信用を失ったかは計り知れない。おそらくユーザーが思っている以上に、ダイハツというブランド価値は地に落ちている。
とくに軽自動車マーケットというのは、ブランドへのロイヤリティが低い傾向にある。つまり、特定のブランドにこだわるファンが少ない。そのため、わざわざダイハツ車を買おうというユーザーが多いとは考えづらい。「軽自動車のダイハツ」、という新ブランディングでどれほど信頼を取り戻せるかは疑問もある。
そもそもトヨタが認証を担うのは小型車に限った話であり、軽自動車の開発体制についての変更は発表されていないのだからなおさらだろう。
その小型車領域においても心配はある。認証領域をトヨタが担ったとしても、そこに対する報告が正しくされなければ不正が起きないとは限らない。同じトヨタグループで起きた、豊田自動織機によるディーゼルエンジン不正においては、「見栄えをよくする」ための不正もあった。ダイハツの小型車についてトヨタが認証を担うのであれば、トヨタとダイハツの風通しの良さも確保する必要がある。
会見の最後に、井上社長は「オールダイハツ一丸、ワンチームとなって信頼を回復するしかない。変わろうとしているダイハツを見守っていただきたい」と強い思いをアピールした。
はたしてダイハツは“日本一歴史のある自動車メーカー”というプライドを捨て、新しいモビリティカンパニーとして生まれ変わることができるのだろうか。ユーザーとしては、ダイハツのリボーンをフラットな目線で確認していくほかない。