この記事をまとめると
■全日本ダートトライアル選手権のDクラスは改造範囲に制限がなくモンスターマシンが参戦している
■全日本ダートトライアル選手権で活躍する3台のモンスターマシンを紹介
■モンスターマシンをドライブする3人のドライバーにその印象を聞いた
改造範囲無制限クラスがある全日本ダートトライアル選手権
未舗装のスピード競技であるダートトライアルの国内最高峰シリーズ、全日本ダートトライアル選手権が3月23〜24日、京都コスモスパークを舞台に開幕。雨/ウエットコンディションのなか、各クラスで激しいタイム争いが展開されていたのだが、そのなかでもっとも注目を集めていたのが、やはり最高峰のDクラスだといえるだろう。
Dクラスの対象モデルは改造範囲が無制限で、エンジンの排気量アップはもちろんのこと、他車種のパワーユニットの移植、冷却ユニットの後方マウント、足まわりの構造変更もOK。最低重量も設定されていないことから、材質置換による軽量化も可能である。
そのため、Dクラスには1分の1ラジコンカーのようなマシンが続々と登場。最大出力は500馬力以上、最低重量が1100kg前後……といったマシンも少なくない。WRCに参戦するRally1車両の最大出力はハイブリッドブーストを含めて500馬力、最低重量は1260kgといわれているだけに、まさにD車両はWRCのワークスマシンに匹敵するスペックで、未舗装のショートコースでは最強のマシンといえるだろう。
当然、ドライバーにも緻密なコントロール技術が求められることから、全日本ダートトライアル選手権のDクラスでは鎌田卓麻選手、田口勝彦選手、炭山裕矢選手など、国内外のラリーで活躍してきたドライバーが活躍。事実、2024年の開幕戦・京都でも田口選手が優勝、炭山選手が2位、鎌田選手が3位と彼らラリー出身ドライバーが表彰台を独占したが、彼らの主力モデルはどのようなマシンなのか?
というわけで、ここではダート界のモンスターマシンに注目したい。
まず、同大会を制した田口選手のマシンはダートラシーンの定番モデル、三菱ランサーエボリューションだが、こちらはチューニングの名門、HKSが2023年に開発したワークスモデル。
近年のD車両は重量バランスを考慮してラジエータをリヤに搭載するマシンが主流だが、同モデルは慣性マスの集中化を図るべく、助手席にラジエータを搭載したほか、空力性能を追求すべく、アンダーガードのフラットボトム化を実施するなど、独自のアイディアが注ぎ込まれたマシンだ。
エンジン排気量は2200cc、最大出力は450馬力オーバーで、車両重量は1250kgとD車両としては平均的なスペックだが、HKSの篠宮和也氏は、「パッケージとしてはまとまっていると思います。大幅なアップデートは行なっていませんが、確実に走り切れるように細部を仕上げました」と語る。
ステアリングを握る田口選手も「D車両がいままで乗ってきた競技車両のなかでもっともパワーがありますね。重量配分も特殊で、ランサーなんだけどランサーじゃないようなフィーリング。ハンドリングがいいのでコントロールしやすいし、トラクションをかけたほうが安定するので面白いです。ラジアルタイヤを装着して、ショックを煮詰めれば舗装を走っても速いと思いますよ」とのこと。
やはり、ダートラの定番モデルとはいえ、特殊なマシンに仕上がっているようだ。