厄介なのは儀式ではなく渋滞!?
4)暖機運転 or 低速走行
ひとまずエンジンが始動し、回転が少し落ち着いてきた段階で完全にエンジンが暖まるまで暖機運転を続けるか、低速走行させるか。これは乗っているクルマや仕様、さらにはオーナーや主治医の考え方によってまちまちです(筆者は低速走行派です)。
もしも、初めての旧車でこのあたりのセオリーが分からない場合、手に入れたショップや愛車の主治医、同じクルマを所有するベテランオーナーに教えを請うのがベストでしょう。このテーマで議論すると白熱しそうです。
5)ギヤは2速を舐めてから1速へシフト
といっても本当に舐めるわけではなく(笑)、ニュートラルからいちど2速に入れ、それから1速に入れるとスムースだから、というわけです。現代(近代も含めて)のクルマであれば、トランスミッションにシンクロ(シンクロナイザーリング)が組み込まれており、シフトチェンジの際に前後の歯車の回転速度を同調させる役目を担っています。
しかし、古いクルマには1速のギヤにシンクロが備わっていなかったり、経年劣化でヘタっていることもあります。そのため、ニュートラルからいきなり1速に入れるとギヤがうまく噛み合わずに「ガリッ」となったりします。2速をなめてから1速に入れる行為は、このギヤ鳴りを防ぎつつ、スムースにシフトチェンジするためでもあるのです。身体がこの動作を覚えてしまうと、現代のMT車に乗っても同じことをしてしまいます。
6)ダブルクラッチ
2速をなめてから1速へ……と同じような事情で、シフトチェンジの際にギヤ同士の回転をスムースにするために行うのが「ダブルクラッチ」です。シフトチェンジの際にニュートラルの位置でいちどアクセルを吹かし、クラッチを切って次のシフトに入れることで、一連の動作がスムースになります(と同時に、トランスミッションへの負荷も軽減されます)。
このアクセルを吹かすタイミングやアクセルの踏み込み量もそのときどきによって異なるため、経験と勘、いわゆる修練が必要です。一連の動作をいかにスムースかつ的確に、さらには素早く、クルマに負荷を与えずに行えるかが旧車を操る醍醐味のひとつといえます。
7)エンジンを切る前にアクセルを数回吹かす
キャブレターを装着したクルマ、さらには高回転よりにエンジンがチューニングされた個体であれば、アイドリングの状態はどちらかというと苦手な領域。プラグがかぶり気味となり、次にエンジンを始動するときにスムースにいかない可能性があります。
その状況を回避するために行うのが「エンジンを切る前にアクセルを数回、“ブォン、ブォン、ブォォォォォオン”」と吹かす儀式です。インジェクション(電子制御燃料噴射)の場合、コンピュータが自動的に調整してくれるので、この儀式は不要。むしろガソリンの無駄遣いになってしまいます。でも、身体がこの動きを覚えてしまうと、現代のクルマに乗ってもついやってしまうんですよね……。
まとめ:渋滞を極力避けることも大事な儀式?
旧車としてもっとも避けたい場面が渋滞。低速走行のため冷却風がエンジンに送られず、水温(または油温)が上昇し、最悪の場合はオーバーヒートという事態に見舞われてしまいます。
旧車オーナーさんのなかには「ウチのクルマは渋滞のなかでもぜんぜん平気」とおっしゃっる方もいますが、クルマに無理をさせていることに変わりはありません。
エンジンが気持ちよく回転し、適度に内部のオイルが循環されることで「気持ちのよい走り」が味わえます。現代のクルマほど故障知らずとはいえない旧車だけに、あらゆる場面において愛車を労る気遣いこそが「もっとも大事な儀式」といえそうです。