この記事をまとめると
■EVのバッテリーは温度が上がるので冷却性能が走行性能や充電性能を左右する
■主に空冷、水冷、油冷の3つがあるが冷却性能は水冷の効率がいい
■駆動用バッテリーはEVとして使用したあとの再利用が今後の課題
仮名タイトル
電気自動車(EV)に車載される駆動用のリチウムイオンバッテリーは、冷却が必要だ。エンジンほど高温にはならないが、充電や放電の際の内部抵抗によって、温度が上がる。ゆっくり走っていればそれほど熱の影響は大きくないが、高速道路の走行や急な加減速の繰り返しでは温度が上がり、冷める間がなくなる。そこで、冷却性能がEVの走行や充電の性能を左右する。
初代リーフなど、初期のEVは空冷が主だった。バッテリー容量もそれほど大きくなく、急速充電も連続して行われる機会が限られたので、それで基本性能は満たされた。
それでも、高速道路を連続走行するような場合は、セルを重ねたバッテリーパックの場所によって、よく冷える箇所と、熱が溜まりやすい箇所が混在し、熱の溜まるセルに性能が引きずられることが起きる。バッテリーは、性能の落ちたところを基準に放電や充電が行われるためだ。
水冷や、空調の冷媒を使った冷却は、バッテリーパックの位置を問わず配管を巡らせることによって冷却性能を安定させることができる。セルが持つ充放電性能を存分に発揮させられる。一方、その冷却水や冷媒の温度を調整するラジエター機能が必要であり、部品点数が増えたり、搭載位置をパッケージングに組み入れたりしなければならない。それは原価を高め、車両の部品配置に制約をもたらす。それでも、バッテリー温度が安定すれば、高速道路を連続走行したり、急速充電を繰り返したりしたい場合に有効だ。
水や冷媒以外に、油冷も考えられているようだ。モーター冷却が油冷だからだ。電気系の冷却系統を一元化できる可能性がある。この場合も、水冷と同様に、配管やオイルクーラーなどの部品の追加と、その設置場所などパッケージングに考慮が必要だ。
熱交換の性能は、空気を1とした場合、水が200倍で、油は30倍といわれる。やはり水冷が圧倒的に効率的で、効率が高いことはシステムの容量を抑えられることにつながる。
駆動用バッテリーの冷却で考慮しなければならないのは、EV後の再利用だ。再利用では、バッテリーパックそのままではなく、可能な限りセルの単位まで細分化し、次の利用に適した性能の検証や、寸法に整えることが求められる。EVに車載されるバッテリーパックのままでは、あまりにも大きすぎる場合があるからだ。また、水冷や油冷で温度管理をしたとしても、厳密に1セルごとの温度管理ができるわけではない。バッテリーパック内の各セルの性能には、やはりバラツキが残る可能性がある。
EV後の再利用をするには、分解しやすさが重要だ。それによって再利用も進むだろうし、再利用のための原価も下がることになる。その点で、もっとも優れるのは空冷だ。水冷や油冷は、配管を外すなど分解に手間がかかる。
EVの進化は、単にクルマの商品性をいかに高めるかだけでなく、車種に応じた使い道を見極めながら、バッテリー冷却方法を性能向上だけでなく、EV後の再利用も視野に入れ適切な仕様に仕立てることが重要なのである。
高性能であればいいという思考では、間違ったEVづくりになる懸念が残る。