人によって考え方やマシンのセッティンが異なるのもポイント
これと同様に全日本ジムカーナ選手権のPN3クラスで活躍するユウ選手もサーキットのタイムアタック競技で活躍するドライバーだ。全日本ジムカーナ選手権では2023年にPN3クラスで3連覇を達成したほか、2024年も第1戦で2位、第2戦で3位に入賞。さらに筑波サーキットのタイムアタックでは、1分5秒をマークするなど、まさにジムカーナとサーキットのタイムアタックで躍進している。
そんなユウ選手も、「コースを攻略するという意味ではジムカーナもサーキットでのタイムアタックも同じだと思います。それでも、サーキットは車速域が高いのでクルマのもっているエネルギーが大きく、たとえば筑波サーキットの80RではGの入れ替わりなんかはジムカーナにはない感覚。それに、富士スピードウェイの100Rのように、カントがついている長いコーナーはジムカーナにはないので、いままでに感じたことのない感覚がありますね」と分析している。
さらに、ユウ選手は「たとえばジムカーナドライバーはブレーキングでグッと止めて、グッと曲がることが上手いんですけど、サーキットではそうしちゃいけないコーナーも多い。どうしてもサーキットに対する完熟度が低いので、僕はブレーキで止めすぎる傾向にあるんですけど、タイムアタックのスペシャリストはそうではないので、止め過ぎない、曲げ過ぎないように注意しています」とブレーキングの使い方の違いを解説する。
一方、マシンに関してユウ選手はジムカーナもサーキットのタイムアタックも同じセッティングで行なっているようで、ユウ選手によれば、「サーキットを周回する場合、ブレーキパッドを変えないと危ないけれど、タイムアタックの周回数は少ないのでブレーキパッドもタイヤもそのままの状態で走っています」とのことである。
そして、ジムカーナもサーキットでのタイムアタックも徹底的にチューニングしたマシンで取り組んでいるドライバーがホンダS2000を駆る広瀬献選手にほかならない。2023年の全日本ジムカーナ選手権ではリヤ駆動の最速クラス、BC2クラスで3連覇を達成したほか、筑波サーキットのタイムアタックでは1分0秒4をマークするなど、両カテゴリーで素晴らしいパフォーマンスを発揮。
そんな広瀬選手は「基本的にジムカーナもサーキットのタイムアタックもドライビングは同じです。もちろん、ブレーキングについていえば、“止めるブレーキ”と“曲げるブレーキ”があって、曲げるブレーキがメインとなるジムカーナに対して、サーキットではスピードレンジの高いコーナーが多いので、止めるブレーキが長くなったりと微妙に違う部分はあるんですけど、ドライビング的にはほぼ変わらないと思います」と分析している。
気になるマシンに関しても、「ジムカーナではサイドターンを行うのでリヤのブレーキパッドはメタルにしていますからね。そのままの状態でサーキットを走ると3周ぐらいで終わっちゃうから、サーキットでタイムアタックをする場合は、リヤのブレーキパッドだけ交換していますが、それ以外はそのままの状態です。車高もバネレートもジムカーナ仕様のままタイムアタックしています」とのことである。
ちなみに広瀬選手によると、メンタル的なアプローチでいえばジムカーナとタイムアタックは近く、「サーキットではタイムウォーマーを使えますが、筑波のタイムアタックもコースインして2周目にタイムアタックを行うので、メンタルの持っていき方はジムカーナに近いと思います」と語る。
さらに広瀬選手は「タイムアタックでは2周目にピークを合わせるために、タイヤはもちろん、最近ではブレーキやミッションも温めていますが、ジムカーナではそれが許されていない。ジムカーナはスタートしてから、できるだけ早くピークに持っていってタイムを出さないといけない……という部分で難しさはありますが、タイムアタックも1周目にタイヤやブレーキが冷えていきますからね。そのあたりの難しさはありますが、ジムカーナドライバーはすぐにピークへ持っていくことに慣れています」とのことだ。
以上、4名のドライバーに話を聞いてみたが、ジムカーナもサーキットのタイムアタックも共通する部分が多く、その違いを意識してアジャストすれば両カテゴリーに対応可能。さらにマシンに関してもブレーキパッドを交換すれば、それぞれのカテゴリーでマシンのパフォーマンスを活かせることから、ジムカーナドライバーたちはサーキットでも好タイムをマークしているのである。