この記事をまとめると
■全日本ジムカーナの2024年シーズンがスタート
■ジムカーナを走るドライバーにはサーキットでのタイムアタックに勤しむドライバーも多い
■サーキットでのタイムアタックとジムカーナでは必要な要素が共通しているのも特徴だ
ジムカーナとサーキットをそれぞれ楽しむ選手は意外と多い
舗装を舞台とするスピード競技、ジムカーナでは各ドライバーが1台ずつタイムアタックを披露。ミニサーキットやパイロンコースで時に豪快に、そして時に繊細な走りを披露しているが、彼らジムカーナドライバーたちのなかには、サーキットを舞台にしたレース競技やタイムアタック競技に挑むドライバーも少なくはない。
しかも、国内最高峰のジムカーナシリーズ、全日本ジムカーナ選手権で活躍するトップドライバーのなかには、サーキットのタイムアタックに参加し、好タイムをマークしている選手もいるのだが、果たしてジムカーナとサーキットのタイムアタックで、ドライビング面において共通するものはあるのだろうか? また、車両のセッティングにおいて、ジムカーナとサーキットのタイムアタックでどのような調整を行なっているのだろうか?
というわけで、3月15〜17日、全日本ジムカーナ選手権の第1戦および第2戦が行われたモビリティリゾートもてぎ南コースで、サーキットのタイムアタックでも活躍するドライバーを直撃した。
まず、ジムカーナとタイムアタックの“二刀流”としておなじみのドライバーが、ポルシェ911 GT3RSで全日本ジムカーナ選手権のPE1クラスに参戦している古谷和久選手だ。
「もともとは19歳から26歳までジムカーナをやっていたんですけど、その後はレースとタイムアタックを中心に活動していました。2022年に2ペダルのクラスが設定されたのでジムカーナに復帰したんですけど、いまもジムカーナのシーズンオフにタイムアタックをしています」と古谷選手。
そんな古谷選手がジムカーナとタイムアタックに共通するテクニックとして挙げたのがブレーキングで、「ジムカーナを初めた当初はミニサーキットしか走ったことがないので、初期制動の強いブレーキングができなかった。ブレーキを踏み増ししながらターインするようなブレーキングしかできなかったんですけど、タイムアタックで国際コースを走るようになってから初期で車速を殺して、リリースしながらコントロールするブレーキングを覚えましたが、そのブレーキングはジムカーナに戻ってきてからも生かすようになりました。いまでは2種類のブレーキングを使い分けています」とのことだ。
その以外の部分でも共通することが多く、「確かにサイドターンはジムカーナだけのテクニックですが、フロントに荷重をかけて曲がっていくという部分では、ジムカーナもタイムアタックも同じです。とくに、ポルシェ911はフロントに荷重をかけてあげないとアンダーステアになるので積極的に荷重をかけています」と古谷選手は語る。
一方、ジムカーナで学んだことがサーキットでも生かされているようで、古谷選手によれば「ジムカーナはタイヤが冷えた状態で走らなければいけないんですけど、その経験がレースで役に立ちました。冷えた状態から攻められるので、レース序盤で首位に立つことができるようになりました」とのことだ。
気になるマシンに関しても、古谷選手はジムカーナとサーキットはほぼ同じセッティングで参戦しているようで、「ジムカーナでは規定に合わせてフロントタイヤは245/40/19、リヤタイヤは285/35/19を装着していますが、タイムアタックではフロントに265/35/20、リヤに325/20/20を装着。それに合わせてジムカーナはキャンバーを立てたりと、クルマを曲げやすいようにアライメントを変えていますが、それ以外は大きく変えていません」とのことだ。
こうしてジムカーナとサーキットでのタイムアタックを両立させている古谷選手は、3月17日に行われた全日本ジムカーナ選手権の第2戦において、PE2クラスで3位に入賞したほか、筑波サーキットではラジアルタイヤで1分フラットの好タイムをマーク。「ポルシェ911はオールマイティなのでジムカーナもサーキットも楽しいです」と語るように、二刀流を満喫している。
また、全日本ジムカーナ選手権のPN3クラスにトヨタGR86で参戦する西野洋平選手も筑波サーキットを舞台にタイムアタックを行なっているドライバーのひとりで、16日に開催された第1戦でクラス5位に入賞したほか、筑波サーキットでのタイムアタックにおいてもジムカーナ仕様のマシンで1分5秒をマークしている。
「車速はサーキットのほうが高いですし、サイドターンはジムカーナだけのテクニックですけど、基本的なドライビングは同じだと思います。このコーナーを抜けて、次のコーナーにどうアプローチするのか……という部分も同じです」と西野選手。
そのうえで「コース適応能力はジムカーナドライバーのほうが高いと思います。ウォームアップでコースの状況を把握したり、路温の低い状態でアタックする部分においてはジムカーナドライバーのほうが長けていると思いますが、どうしてもジムカーナドライバーはコンパクトに走る傾向にあります。タイムアタックのスペシャリストをみると、高速コーナーのアプローチやタイヤのウォームアップの仕方とかは上手いですね」と西野選手は付け加える。
一方、マシンに関しても西野選手はジムカーナ仕様の状態でタイムアタックを行なっているようで、「ジムカーナ用のブレーキパッドは1周か2周しか走れないので、タイムアタックなら大丈夫ですが、レースに出る場合、ブレーキパッドは変えた方がいいでしょう。最初は自分もレース用のパッドとローターに交換していましたが、いまはタイヤを含めてジムカーナ仕様のままで走っています」とのことで、西野選手はジムカーナのパッケージのまま、サーキットのタイムアタックに挑んでいるそうだ。