この記事をまとめると
■フォーミュラE世界選手権 2024“東京 E-Prixが開催された
■地元日産チームのチームテント内を特別に見学し、マシンの特性などを取材
■石油会社のシェルと一緒になってケミカルの開発なども行なっている
レース直前の日産ピットに潜入!
3月30日、この原稿がきっと公開されている頃だろう。いよいよ東京都心の公道を封鎖して行われるビッグイベント「FIA フォーミュラE世界選手権 2024“東京 E-Prix”」がスタート目前だ。
世界各国からさまざまな自動車メーカーが参戦しており、なかでもポルシェやジャガー、マセラティといった日本でも馴染みのあるメーカー(チーム)が揃う。また先日、ヤマハ発動機が来シーズンから参戦することが発表され、大きな話題となった。
そんななかでも今回注目なのが、日本が世界に誇る自動車メーカーの日産の存在ではないだろうか。同社はフォーミュラE世界選手権にシーズン5(2018年/19年)から、日本の自動車メーカーとしては唯一参戦している企業でもあるのだ。このときのマシンがGen2と呼ばれるモノであった。
今回は、そんなフォーミュラEの決勝レース直前の「日産フォーミュラEチーム」のチームテントに特別に潜入することが許されたのだ!
短い時間かつ撮影NGな場面が多かったが、その内容を少しお伝えしよう。
先ず、日産のチームテント内には、オリバー・ローランド選手が担当する22号車と、日本のスーパーGTでお馴染みだった、サッシャ・フェネストラズ選手が操るエース車両、23号車が2台収まるようになっているほか、テント内にはエンジニアたちが作戦会議などを行う会議スペースが設けられている。ちなみに、環境に配慮し、無駄な資源は極力使わないサスティナブルなレースというのがこのフォーミュラEの特徴だ。
なので、世界で行われるレースに帯同するチームのテントはどの会場に行っても全チーム、テントのサイズや使用する面積が決まっているとのこと。そして、持ち込める総機材量も7トンまでとレギュレーションで決まっているそうだ。また、移動も船便などをメインとし、機材など工場などにいちいち戻してはいけないという。この移動で無駄なCO2などが出てしまうので、それをカテゴリー全体で抑制するのが狙いなんだとか。「そこまで徹底するのか!?」と驚かずにはいられない。
また、今回は担当エンジニアからマシンの詳細も少し聞くことができた。
現在使われているのは、Gen3と呼ばれる第3世代のマシンとなっており、2022‐23年シーズンから導入されたモノだ。日産のスタンスとしては、”市販車技術の応用”という点に重点を置いて参加しているとのこと。マシンの出力は350kW(470馬力)となっており、車重は850kg程度。これはリーフの半分くらいの重量だ。リーフでさえ、初期加速はなかなか刺激的なので、イザこんなのに乗ったらと思うと……。とてつもなく刺激的に違いない。そう感じさせるスペックだ。なお、0-100km/h加速は2.5秒、最高速度は320km/hという数値を叩き出す。
充電はテント内にある充電器から行うことになっており、コネクターはCCS2形式を使用する。なお、このレースはほとんどワンメイクとなっており、車体の90%は全チーム同じスペックとなっている点も注目だ。主なポイントを挙げると、「シャシー」、「エアロ」、「ボディ」、「前後サスペンション」、「タイヤ(ハンコック製の全天候型タイヤ)」、フロントに搭載される250kWの回生用ジェネレーターは全車統一されている。
「ここまで一緒ならメーカー同士何で争ってるんだ?」となるだろう。しかしご安心を。フォーミュラEでは、リヤに搭載される最大350kWの出力までが許されるパワートレインだけは各社のオリジナルユニットとなっている。ただしここはブラックボックスでトップシークレットとなっているので撮影NGであった。
今後ますます加速するであろう電動化シフトにおける重大なヒントがここには詰まっているので、当然といえば当然だが……。実際に日産では、レース中に発生した回生エネルギーのデータをフィードバックして、
そしてこのフォーミュラEでは先述した、”回生”が大きなキーとなっており、いかにこの回生でどれだけ電力を蓄えるかが勝負の鍵だ。ちなみに、「アクセルを踏みまくるとみるみるうちにバッテリーが減る」といわれるEVだが、フォーミュラEでは約1時間のレースで使われるエネルギーのうちの60%ほどをエネルギーを回生によって回収できるそうだ。これがまさに、回生で得たエネルギーを効率よく使っているという何よりの証拠だ。
また、レーシングカーではお馴染みの、ステアリングからさまざまな情報を確認する機能ももつ。とくに特徴的なのが、回生ブレーキのレベルやブレーキバランス、EVならではの機能としてバッテリー量の調整など、マシンをドライバーが細かく操作できる点だ。ちなみに、中央部のモニターに出るさまざまな情報は、エンジニアがいるテントからは確認できないとのことなので、チームとの情報共有も勝利するためのポイントになるという。
さらに、フォーミュラEで使われる車両はエンジンを使わないので、練習走行や予選のフィーリングを会議して、場合によってはプログラムを介してその場でマシンをアップデートできるのもEVならでは。
フォーミュラEはまさに、リアルタイムで変化する走る実験室なのだ。