ロバンペラを倒したドリフト王者がラリーに挑戦! すべてが「初」の世界を走ったKANTA選手を直撃した (2/2ページ)

まだペースノートを100%信じて走っていない

 ——これまで、いろんなドライバーと組んでラリーに参戦していますが、KANTA選手の印象はどうでしたか?

 保井選手:まったくラリーを知らないし、林道もGRヤリスも初めてですからね。横で見ていると、運転の仕方や林道の走り方、ペースノートなどすべてのことに悩みながら走っている状況で、同じペースノートで「4」と表記したコーナー(注:コーナーの大きさを数値化)でも、ちょっとゆるかったり、ちょっとキツかったりしている。そういった意味では、KANTA選手はまだペースノートを100%信じて走っている状態ではないですね。

 ——なるほど。そういった意味でも経験が必要なんですね。

 保井選手:コース上にいないと経験は積めないので、いまはとにかくマイレージを稼ぐことが重要です。とくに今回のラリーではインカットをして砂がコース上に出てくるので、レッキをしたときと比べて本番はどういう荒れ方をするのか、そういった部分も経験しないと身につかない。そういう意味では、ちゃんと走行を重ねたことはKANTA選手にとってはポジティブな部分だと思います。

 このように慣れないラリー競技に苦戦を強いられていたKANTA選手だが、それでもコンスタントな走りを披露し、JN2クラスで7位/MORIZO Challenge Cupで3位入賞した。脱落者が続出するサバイバルラリーが展開されるなか、デビュー戦を走り切ったことはKANTA選手にとってリザルト以上に多くのことを掴むことができたことだろう。

 というわけで、最後にKANTA選手を要するTKモータースポーツの勝田貴元代表を直撃!

 ——そもそもKANTA選手をラリー競技に誘った理由はなんですか?

 勝田代表:若くて走りも含めて魅力のある選手を探しているなか、FDJでKANTA選手が素晴らしい走りをしていましたからね。ラリーをやってみたら面白いんじゃないかな……というところからKANTA選手に声をかけました。

 ——KANTA選手の走りはどうですか?

 勝田代表:KANTA選手はラリーが初めてですからね。レベル的には「TCって何?」といったところからなので、コ・ドライバーの保井選手に教えてもらいながら、まずはひと通りラリーをやってみるところからスタート。そのうえで、走り方とかペースノートで何が足りないのかをやっていくんですけど、まずは1歩目なので焦らずにやっていってほしい。クラッシュせずに帰ってきたので、その通りにやってもらっていると思います。

 ——KANTA選手は慣れないラリーに苦労していましたね?

 勝田選手:ラリーはモータースポーツのなかでも特異なカテゴリーで、経験値が必要になりますからね。パッと出てすぐに結果を残せる競技ではないので、最終戦までにどれだけ成長してくれるのか楽しみです。

 ——KANTA選手はドリフト出身ですが、ドリフトの技術のなかでラリーに活かせるものはあるんでしょうか?

 勝田選手:僕はドリフトをやっていないのでなんともいえませんが、グリップの限界を超えたところでマシンをコントロールするドリフトに対して、ラリーはグリップの限界を探るようなところでコントロールしますからね。そのあたりは違いますが、クルマの挙動やコントロールという意味では、四輪を使ってドライブするので基本的に同じだと思います。僕もレースからラリーに来ましたが、レースの経験が生きている部分もありますので、これからラリーを経験しながらドリフトから活かせるものを見つけることができればKANTA選手の武器になると思います。そのためにも、まずはラリーを知ってもらって少しずつステップを上げていってもらいたいですね。

 まさに異色のルーキー、KANTA選手は、全日本ラリー選手権で注目の存在。コースサイドで見る限り、まだまだ全開ではなく、探りながらのドライビングに見えるが、その分、伸び代があるだけにラリーとドリフトの二刀流に挑むKANTA選手の動向に今後も注目したい。

 なお、ラリー三河湾では山田啓介選手がJN2クラスで2度目の勝利を獲得するほか、MORIZO Challenge Cupのウイナーに輝いた。


廣本 泉 HIROMOTO IZUMI

JMS(日本モータースポーツ記者会)会員

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