ポリゴンかよ! 「オシャレ」にも「何も考えていないよう」にもみえる「テスラ・サイバートラック」はデザインのプロから見てアリなのか? (2/2ページ)

使用する部材の都合をデザインで解決

銃弾も跳ね返す装甲性能をカタチにする

 さて、キモはやっぱりほぼ平面だけで構成されたスタイルですが、これは素材の特徴が大きく影響しているようです。「ウルトラハードステンレススチールエクソスケルトン」と呼ばれるボディ素材は新規に開発された頑丈な合金で、なんと社内でのサブマシンガンによる耐久試験では1発の弾丸も貫通できなかったそう。

 ナゼそんな物騒な試験を……と思いますが、昨年米国外のテスラオーナーが武装襲撃を受けたそうで、先の転倒も含め、徹底した安全性こそがこのトラックの最優先事項だとか。そんな外板を使ったら流麗な面の加工などは相当困難な筈で、「じゃあいっそのことすべて平面で行こうとなったのでは?」と想像されます。

 そうそう、フロントについては恐らく歩行者保護の要件もあってか、ある程度の曲面構成になっていますね。

革新性とデザイン性の両立は難しい?

 ということで、この特異なスタイリングにはそれぞれ根拠となる理由が見つかるワケですが、じゃあそれは「いいデザイン」なのか? ここはふたつの対照的な見方があると思います。

 ひとつは、EVとしての可能性を感じさせるスタイリングであること。他社はもちろん、テスラ自身のラインアップが「EVっぽくない」ものであるなか、コンパクトなモーターでなければできないパッケージを示した点で画期的だといえます。

 一方、スタイリング自体についてはインパクトこそ大きいものの、いわゆるグッドデザインとはちょっと違うような……。まるでステルス戦闘機にタイヤを付けたような斬新さと驚き、刺激の強さは、あくまでも企画モノといえそうです。

 また、弾丸を通さない合金やアーマーガラスで装甲されたこのトラックが、一体どんな道を走るのかわかりませんが、街なかの景色としては少々過激でしょう。そこはデザインのあるべき役割と少々離れているかもしれませんね。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
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オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
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