大きいが取りまわしに苦労はなく乗り心地も快適だ
それでも公道試乗の前に気になっていたのは、全長が5.3m以上と長いこと、リヤのサスペンションがリーフスプリングになっていることの2点だった。
参考までに上級グレードGSRのサイズを記すと、全長5360mm・全幅1930mm・全高1815mm・ホイールベース3130mm、最小回転半径6.2mとなっている。この数値だけを見ると、街乗りで苦労しそうな印象を受ける。
しかしながら、今回の初試乗ではボディの大きさは感じつつ、取りまわしが難しいと感じることはなかった。ひとつのポイントは視点が高いことで、周囲を認識しやすいことがある。ボンネットがフラットで大きさを把握しやすい上に、オフロード性能を確保するためオーバーハングを短くしていることもあって、フロントまわりの位置関係がつかみやすいのだ。
また、インパネ中央に置かれた9インチディスプレイ下のボタンを押せば、サイドアンダーや前後の様子などを映し出すことができる。このディスプレイが非常にきれいなため、狭い場所でカメラ映像を参考にしながら走らせることのストレスがないのも、街乗りでのポジティブな印象となっている。
おまけ的にいえば、ボディ後方にあるベッド(荷台)の後端部分がルームミラーにさりげなく映るようになっているため、走行中に常にボディサイズを把握できるのも、扱いやすさにつながっている。全長が5.3mを超えていても、車両感覚がつかみやすいといえる。絶対的なサイズはあるので、駐車場などで物理的な制限を受けることはあるかもしれないが、こと、道を走っているという点においては、街乗りメインの乗用ユースであっても、問題なく活用することができそうだ。
もうひとつの懸念として持っていた「リーフスプリングゆえに乗り心地は硬いであろう」という点については完全に杞憂だった。
リーフスプリングというのは日本語で「板ばね」といい、リーフリジッド形式のサスペンションでは複数の板バネを組み合わせていることが多い。この形式においてスプリングはボディを支えるだけでなく、サスペンションアームとしても機能することになる。
つまり、スプリングには十分な強度や剛性が必要であり、一般的に乗り心地が硬くなりがちなのだ。
しかし、トライトンを試乗した印象においては乗り心地のネガは感じられなかった。もちろん高級サルーンのような乗り味ではないが、平均的なクロスカントリー4WDと比べたときには、むしろ快適性は高いのでは、と感じるほどだった。
その理由は、サスペンションを動かす設計としたことにある。フロント・ダブルウイッシュボーンのストロークを確保したのと同時に、リーフスプリング同士がスムースに動くようにしたり、バネとフレームをつなぐシャックルが動きやすいようにしたり、ゴムブッシュを適切に設計したりすることで、とにかくリヤサスペンションがストロークしやすいようになっている。
結果として、トライトンはピックアップトラックというカテゴリーから想像できないほど「しなやか」な乗り味を実現している。
余談めくが、新型トライトン全グレードには天井にサーキュレーターを標準装備することでキャビンの快適性を高めている。このあたりも、メーカー自身がトライトンをSUVとして作り上げてきたことの証左といえるだろう。