カスタムカーショーの「素材」はジムニーが大人気! 一方で全然見かけない車種も! カスタムベースの人気・不人気は何で決まる? (2/2ページ)

カスタムカー向きのクルマとそうでないクルマがある

■同じ旬の車両でもカスタムの数は明暗にわかれた

 ここ1〜2年でフルモデルチェンジを受けて注目度が高い旬な車種のなかでも、ショーに多く出展されている車種とそうでない車種にわかれていると感じました。

多い方の代表は「トヨタ・プリウス」と「アルファード/ヴェルファイア」

 2023年に8年ぶりのフルモデルチェンジを受けた「プリウス」は、スポーツカー顔負けのスタイリッシュな外観となり、カスタムビルダーの心を大いにくすぐりました。

 車高をべったりと下げて大径ホイール&低扁平なタイヤを履かせるだけでもスポーツ系の「走りそう」な雰囲気が増す外観のデザインは、カスタムベースとしてとてもポテンシャルが高い素材として受け取られたようです。

 そこにアンダースポイラーを加えたライトめなカスタムが多い比率を占めていましたが、なかにはワイドフェンダーキットを装着した大胆なモディファイが加えられた車両や、他車種への顔面スワップの素材として使われた例もありました。

「アルファード/ヴェルファイア」も2023年にフルモデルチェンジを受け、話題に上り続けているホットな車種です。グリルの面積を大きく取った押し出しの強い迫力のデザインとなった先代から、カスタム好きの高級志向ユーザーの心をがっつりと捉え、カスタム業界を大きく潤した感があります。

 その先代の人気をそのまま受け継いで、モデルチェンジ直後の今年は先代に負けない多くの出展車両が見られました。

 フロントマスクをほぼ全面覆う面積の広いグリルの存在感が絶大なため、その雰囲気を変える手法が多かったという印象です。

 大事な顧客層であるヤンチャ系の人たちに刺さるアイテムであるマフラーも同時に開発して出展しているケースもけっこうありました。

フェアレディZのカスタム車両も出揃ってきた

 日産車では2022年にフルモデルチェンジ(正確にはビッグマイナーチェンジ)を受けた「フェアレディZ」の出展が目立ちました。先代のZ34型から14年ぶりとなる日産を代表するスポーツ車種のニューモデルということで、カスタム業界には「待ってました!」と言わんばかりに熱烈な受け入れ方をされたという印象です。

 売れ筋のホイール+前後スポイラーというライトなモディファイの車両が多く並んでいましたが、ガラッと雰囲気を変えるワイドボディキットをまとった車両や、ガルウイングで華やかさを加えた車両など、大がかりなモディファイで観客の興味を大いに引きつけた車両も多かったように感じました。

 2年目ということでカスタムの内容が充実してきたという印象です。

新型だけどあまり出展が目立たなかった車種もあった

 一方で、同じように2022年、2023年にモデルチェンジを受けた旬なクルマでも、意外と出展が目立たなかった車種もありました。

 そのひとつは「日産エクストレイル」でしょうか。

 人気の高いクロスオーバーSUVジャンルで日産の代表車種として地位を確立した感がありますが、フルモデルチェンジをおこなった2023年から今年にかけての出展数は数えるほどでした。

 確かにカスタムの中心的カテゴリーからは外れますが、アウトドア指向でいえばクロカン車の「ジムニー」がカスタムベースのトップを走っていますので、「エクストレイル」も可能性としてはじゅうぶんあると思いますが、外観のデザインがカスタムビルダーの心を刺激しなかったのでしょうか。

 鳴り物入りで登場した三菱の「デリカミニ」も、話題に上がった割にあまり見かけなかった車種です。

 カスタムしやすい軽自動車枠でツール感の高い無骨なデザインは、カスタムベースとしてのポテンシャルは十分に備えているように感じましたが、これについては理由が読めません。出たばかりのために納車を待ってカスタムを始めるには時間が足りなかったということでしょうか? 来年の出展に期待しておきましょう。

旬が過ぎた車種や旬にはとらわれず人気の高い車種もある

 旬が過ぎて台数を減らした感があるのは「スープラ」です。5年前の2019年に17年ぶりの復活を果たしてスポーツ車界隈の話題をさらった「スープラ」ですが、今年の出展数は数えるくらいでした。

 5年の間にライトなモディファイやフルボディメイクの大胆なカスタム、そして本気の競技車両など、ひと通りのカスタムが出揃って目新しい内容がなくなってきたため、ほかの旬な車種にバトンタッチされて出展数が減ったものと思われます。

 その逆に、モデルチェンジから数年経過しているのに安定してカスタムベース車に選ばれているのが同じトヨタの「86(GR86)」と兄弟車の「BRZ」です。

 スープラは購入価格が高いためカスタムする層は限られてきますが、「86」や「BRZ」はもっと手軽に手が出しやすい価格帯ということで候補に入りやすい車種だといえます。さらに、手が出しやすい中古車のタマが多いということも人気に拍車をかけているのではないでしょうか。いわゆる「遊びやすいクルマ」という扱いですね。

■全体の車種選びの傾向をまとめてみると…

 以上の人気/不人気車種の傾向とトレンドを見たうえでザックリまとめてみると、

1)車両自体の人気の高さ
2)カスタムすればよりカッコ良くなるイメージが湧く
3)ショーに出すからには旬も大事
4)カスタムに手を出しやすい車格、価格帯

 と、だいたいこの要素が満たされればカスタムベース車としての人気が高くなる傾向にあるといえるのではないでしょうか。なので、新車の売れ行きが絶好調な車種でも、カスタムする側の心をくすぐらないと選んでもらえないというケースもそれなりにあります。

 予想としては、来年もジムニーの勢いは継続するでしょう。ウワサでは5ドアの登場も控えているので、あと数年は続くかもしれません。「プリウス」や「アルファード/ヴェルファイア」、「ハイエース」、「フェアレディZ」などの人気車種もまだまだいろんなカスタムが数を増やすでしょう。

 発売時期は未定ですが、そろそろだと言われているスズキの「スイフトスポーツ」が登場すれば、また一気にカスタムシーンが盛り上がるでしょう。日産の「キューブ」もデザインの傾向によってはまたブレークする可能性はじゅうぶんあります。

 ともあれ、今年の2大ショーを見てまわった感触としては、クルマのカスタムシーンはまだまだ盛り上がりを見せ続けてくれるだろうなという前向きなものでした。引き続き期待を込めて来年の開催を楽しみにして待ちましょう。


往 機人 OU AYATO

エディター/ライター/デザイナー/カメラマン

愛車
スズキ・ジムニー(SJ30)※レストア中
趣味
釣り/食べ呑み歩き/道の駅巡りなど
好きな有名人
猪木 寛至(アントニオ猪木)/空海/マイケルジャクソン

新着情報