異色すぎた4WDモデルも!
フルタイム4WDのゴルフといえば、1989年にはラリーのグループA部門で戦うためのホモロゲーション取得モデルとして「ラリーゴルフG60」も登場している。自然吸気の2WD車であるゴルフGTIではもはやWRCで勝てなくなったフォルクスワーゲンは、「4WD+過給器+ブリスターフェンダーのゴルフ」で勝負に出たのだ。
エンジン排気量は1.8リッターで、そこにフォルクスワーゲン独自のスクロール式の圧縮機「Gラーダー」を追加。過給機をつけるとWRCの規則では排気量1.7倍に換算されるため、有利な3リッタークラスに収まるように1781ccから1763ccへ排気量を微妙に減少。ちなみに市販版ラリーゴルフG60の最高出力は160馬力だった。
そして、トレッドをガバッと広げ、ランチア・デルタHFインテグラーレもかくやのブリスターフェンダーをまとうに至ったのだ。WRCのグループAでは残念ながらあまり活躍できなかったラリーゴルフG60だが、5000台生産された市販車の中古車がもしも良好な状態で保存されていたら、いまやかなりの値が付くのではないだろうか。
ちなみに同1989年には、最高出力210馬力の1.8リッター直4DOHCスーパーチャージドエンジンを搭載する「ゴルフG60リミテッド」も70台限定で販売されたが、こちらはブリスターフェンダーではなく、外観的には普通のゴルフIIである。
そして1990年には、前述したゴルフシンクロをベースとした、いまで言うクロスオーバーSUVの「ゴルフカントリー」を投入。ゴルフカントリーは、ゴルフシンクロの最低地上高を上げたうえで、荒れた路面でタイヤが激しく動いても大丈夫なようにホイールハウスを拡大。そして、オフロードでのあれこれを考慮して前後のプロテクトバーや大きな補助灯、岩などからエンジンを守るアンダーガード等々を装着している。
1990年から1991年にかけてわずか7735台のみが生産され、日本への正規輸入は100台ほどでしかなかったゴルフカントリーだが、それはまさに来るべきクロスオーバーSUVブームを予見していたというか、先駆けだったといっていいだろう。
ゴルフカントリーの中古車が市場に出てくる機会はいまやほとんどないが、「オートモビルカウンシル2021」に出品されたいた極上モノには約600万円の値札が付いていた。もちろん人それぞれの価値観次第ではあるが、それぐらいの希少価値はあるといっていいだろう。