一般道では乗用車感覚でコーナリングしていける
さらにコースを進んでいくと、今度はおよそ30度の泥濘路急勾配を登っていくコースが現れる。 また、左右に小さくターンする難しい状況を、トライトンは高い旋回性を持ってクリアできる。エンジンが縦置きで前輪操舵角が最大37.10度と大きく取れるようになり、最小回転半径は6.2メートルとなっている。実際にロックトゥロックまでステアリングを切り込んでターンをしてみると、数値以上に小まわりすることができ、取りまわし性に優れていることがわかる。
続くステージの路面は、同じく急な登坂路で、大きな岩がゴロゴロと転がっているようなコースである。もはや道とはいえず、土石流の跡を登っていくような印象すら受ける。こうした場面でも、トライトンは220mmという最低地上高を生かして苦もなく登っていくことができる。最大トルク470Nmを1500回転から引き出せるトルクの太いエンジンが、こうした場面では有効に活かされ、4LLcのローギヤードポジションだと一層力強く登っていくことができるのである。
トライトンはピックアップトラックであり、荷物積載重量は最大500kgを可能としている。また、大人5人が乗れる4ドアのキャビンを持つ。トータル800kg以上の積載が可能で、そんな状況でもこの走破性を引き出せるのが4LLcモードに託されているのである。
この後、下りの長い泥濘路を速度を上げて降りていくが、車体フロアをどこも擦ることなく走破できたことは大きな驚きでもあった。アプローチアングルが30.4度(GLS)、デパーチャーアングルは22.8度と大きく、またランプオーバーブレイクアングルは23.4度となっていて、それはオフロード専用車といっても過言ではないほどの数値。
フロントオーバーハングが小さいことは細い道での取りまわし時に有効で車両感覚を掴みやすい。リヤサスペンションはリーフスプリングでリジットアクセルを吊り下げているが、リーフスプリングの幅を太くし、また2枚構成とすることで作動フリクションを低減。スムースなホイールストロークを実現している。こうしたチューニングがトライトンの接地性や操作性、そして快適性をもたらす要因となっているのである。
このオフロードコースで、トライトンの悪路走破性の高さが抜きん出ていることが確認できた。次は一般道に出て、日常的な走行性能を確かめてみる。おそらく日本国内においてこのトライトンを購入するユーザーの多くは、日常的に舗装乾燥路を走行することになる。いくら悪路走破性が高くても、毎日泥濘路や砂漠を走るわけではないので、一般的な乾燥舗装路を快適に走れることが、日本のユーザーにとってより重要な問題といえるだろう。
一般道を走り出すと、ステアリング特性が非常にスムースでリニアな動きであることがわかる。ステアリングギヤ比は決して大きくなく、少ない操舵で通常の乗用車と同じようにコーナリングをしていけるのはありがたいことだ。ひとつにはデュアルピニオンのパワーステアリングが採用されたことでステアリングラックの剛性が高まり、また路面からのキックバックを軽減してくれるので走りの質感が高く感じられるのである。
一方で、18インチのタイヤ/ホイールは1本当たりの重量が30kg前後と重く、路面の細かなデコボコやアンジュレーションに対してはときおり振動を引き起こす。その一部が車体に伝わりステアリングやキャビンのフロアにシミーとして伝わるような感覚も確認できた。こうした部分は今後さらに磨き上げられ、チューンアップ・改善され、快適さを増していくと期待が持てるところだ。
標準装着の18インチタイヤは60扁平であり、どちらかというとオンロードのコーナリングパワーを高く引き出す傾向にある。それを65や70扁平などに引き下げれば、タイヤ特性がよりマイルドでソフトな乗り味となって微振動を低減してくれるかもしれない。
エンジンは4000rpmからがレッドゾーンとなり、一般道の走行では1500から2000rpmの間で走れてしまうが、新開発の2.4リッター直噴ディーゼルターボエンジンのフラットなトルク特性と6速ATのロックアップ制御が力強さを発揮し、トレーラーの牽引もラクラクこなせるという。
ダブルキャビンの後席は十分な広さがあり、またUSBの電源ソケットやドリンクホルダーなど、大人5人が乗車しても、長距離の移動で十分使用できる快適性と装備を持っている。人によっては背もたれの角度が立ち上がりすぎているという意見もあるが、悪路を走破するときは上半身が立ち上がっていたほうが腰や上半身への路面からの突き上げ入力が軽減されるので、むしろ好ましいといえる。砂漠や未舗装路の悪路を長時間走るような環境での使用において、トライトンの実用的な快適性がリヤシート背もたれ角度やシート形状にも生かされているのである。
トライトンは75リットルの燃料タンク容量を持ち、モード燃費はWLTCモードで11.3km/Lとなっていて、その通りに走れれば840km以上の航続距離が引き出せる。また、クリーンディーゼルエンジンゆえ尿素SCR用タンクは17リットルと大型のものを装備していて、1000kmで1リットル、1万5000kmほどは未補給で走行できるということも、ユーザーにとってはありがたい。
スペアタイヤは荷台のフロア下に格納され、その横に尿素タンクが配置されている。30kgの重さのあるスペアタイヤを交換する事態に遭遇するのは避けたいものだが、スペアタイヤを装備していることは安心感を得る上で重要といえるだろう。
このように、悪路のオフロード、一般道ともに、トライトンの適合力の高さと相性のよさを確認することができた。
おそらくこのトライトンは大きな支持を得て、世界中からオーダーが集中することになるだろう。 日本国内でもすでに多くの受注を受けているといわれていて、ピックアップトラックの新しい使われ方、ユーザー層の開拓に大きく貢献すると期待されている。