北区はまんま「北」の文字!
もうひとつのデザインタイプとしては「文字型」というのがある。区名を表す文字(漢字)に若干のデザイン処理を加え、それを区道ガードパイプのオリジナルデザインとしているカテゴリーである。もっともわかりやすいのは北区のガードパイプだろうか。これはもうほぼ漢字の「北」そのままだ。このガードパイプを見かければ、北区民の愛国心ならぬ「愛区心」はいやがおうにも盛り上がるのだろう。
一方、杉並区でも「杉」と「並」という漢字をデザインモチーフにした2種類のガードパイプが発見できるが、こちらは漢字そのまんま系ではなく抽象化系である。そのため、一見する限りではややわかりにくい。しかしわかりにくいだけに、「わかる人にはわかる暗号」を共有するようなニュアンスで、杉並区民たちの心をつないでいるのかもしれない。
また、前述した江戸川区のガードパイプには「江戸川型ガードパイプ(B-1タイプ・川型)」というのもあって、これは文字通り江戸川区の「川」という漢字をモチーフとした文字型である。しかしそれは、「川の流れのイメージ」を的確にデザイン化したものでもあるため、後述する「名物型」でもあるといえるはずだ。
そしてその「名物型」に移ろう。これは、その区の名物的な何かをガードパイプのデザインとしているタイプである。洒落たところでは葛飾区が、区の花である「花菖蒲」の形状をガードパイプに用いている。
もちろん「複雑な花菖蒲のカタチをそのまんまガードパイプにはできない」というのが主たる理由だろうが、葛飾区の花菖蒲型ガードパイプは高度な抽象化がなされていて、「よくよく見ると……これは花菖蒲か?」というニュアンスの仕上がり。その微妙な塩梅がオツであり、おしゃれであるようにも思うのだ。
また、江東区は川と海に囲まれた区だけあって、荒川あるいは隅田川の流れ、もしくは東京湾のおだやかな海面を想起させる「波型ガードパイプ」の設置が目立つ。
ただ、同じく荒川と隅田川に囲まれている墨田区は、せっかくの地理的要因を有効に生かしたガードパイプデザインが見当たらないのが残念なところである。とはいえ墨田区には東京スカイツリーという飛び道具があるため、そのうち満を持して「スカイツリー型ガードパイプ」がお目見えするのかもしれないが。
このほかにも名物型としては、墨田区の錦糸町駅前に「錦糸=錦の糸っぽいタイプ」があり、千代田区の御茶ノ水駅近くには、有名な「聖橋」の形状をそのまま取り入れたガードパイプがある。
こういった局所的に現れるナイスなガードパイプにも目を配りつつ散策すれば、街歩きはよりいっそう楽しいものとなるだろう。とはいえクルマの運転中は、ガードパイプのデザインをあまり凝視しないほうがいいように思う。危ないですから。