この記事をまとめると
■海外の本格オフロードマシンたちが電動化の波に乗っている
■悪路を走るクルマとEVの相性は疑問視されることが多い
■EVは緻密なコントロール性を持つことが特徴なので、悪路との相性がいいとされている
クロカン四駆の電動化は意味あるの?
電気自動車(EV)化の流れは、未舗装路を走る4輪駆動車へも広がりはじめた。日本でも人気の高いメルセデス・ベンツGクラスのほか、英国のレンジローバーもその流れにある。過酷な走行条件にさらされるクロスカントリー4輪駆動車(通称:クロカン四駆)で、高電圧や高精度な電気系が要求されるEVとなっても、問題はないのだろうか?
そもそも、モーターはエンジンに比べ約100分の1も速い応答性を備える。したがって、タイヤの駆動力制御をより緻密にできる潜在能力がある。岩や砂などの滑りやすい路面での登り下りにおいて、タイヤの滑りをエンジン車以上に精密に制御することができるため、雪道などを含め、EVこそ未舗装路や不安定な路面状況に適したクルマといえる。より多くの人が、安心して運転し、無事に移動できる可能性をもつ。
たとえば雪道の走行において、モーター駆動によるEVやシリーズ式ハイブリッド車(HV)は、あたかも舗装路を運転するかのように不安なく走らせることができる。もちろん、路面の滑りやすさは舗装路と比べようもなく、速度超過など過信は禁物だ。しかし、恐る恐るアクセルを踏むといった不安がかなり解消される。
つまり、EVこそ、未舗装路を主体とするクロカン四駆などに適した車種といえる。
一方、そうしたクロカン四駆は、凹凸のある路面で地面への接触や、出っ張った岩場などによる床下の接触といった可能性があり、頑丈さが求められる。あるいは、浸水した道や川を横断するなどの場面に遭遇する可能性がある。それでも、漏電や感電の心配はないのか、気になるところだ。
そもそも、リチウムイオンバッテリーは繊細に扱わなければならない。そのため、一般の乗用EVでも頑丈なバッテリーケースに収められ、衝突事故などで外れたり、破損したりしにくいよう製造されている。また、水に濡れては漏電の懸念もあるため、アース機能を含め防水も万全だ。浸水した道を万が一通過する際、エンジン車は排気管から水が入って排気できなくなり、エンジンが停止してしまう懸念があるが、EVなら排気管がないのでその心配はなく、床下のバッテリーが重いことによってタイヤが路面から浮き上がるのを予防する効果もある。
頑丈なバッテリーケースはまた、車体剛性を高めることにも効果があるため、車体がよじれるような凹凸路面でも、駆動力を的確に路面へ伝えたり、そのような状態でドアの開閉ができたりといったことに役立つはずだ。
EVのクロカン四駆は、エンジン車より悪路走破性が高まる可能性が高いといえる。
ちなみに、今年のダカールラリーでは、シリーズハイブリッドでモーター駆動するアウディの車両が総合優勝を遂げた。市販車もモータースポーツも、クロカン四駆のEV化の扉が開いている。