限定受注生産車だったため中古車市場でもレアな存在
目立つこと請け合いのコマーシャルカーとして、多くのお店が購入したことは言うまでもなく、エスカルゴが街を楽しく、華やかなものにしてくれたことを思い出す。記憶にあるのは、都会のお花屋さんやクリーニング屋さん、弁当屋さんが使っていたことだ。
乗用定員4名のインテリア(実用上、ふたり乗りだが……)は、テーブルタイプのダッシュボードデザインを採用し、中央に大型スピードメーター(ホワイト基盤)を配したシンプルなもの。3速ATのセレクターレバーはセンターコンソール上部に配置され、その斬新さもまたパイクカーシリーズならでは。
ある意味、誰もがデザイン最優先として、さほど気にしていてないパワーユニットはE15SS型、1.5リッター直4OHC、73馬力、11.8kg-mというもので、サスペンションは前ストラット、後トレーリングアーム。タイヤは13インチだ。走ってどうの、というクルマではもちろんなかった。
そんなエスカルゴは1989年から1990年までの約2年間限定受注生産で、約1万6000台が販売されたという。現在、中古車としてはかなりの希少車となっていて、新車当時の車両価格122万円に対して、約100~200万円の値付けとなっているようだ。
振り返れば、Be-1はローバー・ミニ、エスカルゴはシトロエン2CVにインスパイアされたヨーロッパのレトロカーを思わせるデザインだけが斬新なパイクカーであったものの、そのオリジナリティは強く、それに続くパイクカーとともに、当時の話題をさらい続けた日産渾身のヒットカーシリーズであったことは間違いない。日産から、Z世代向けの令和のパイクカーシリーズなんて、出てこないかしらん。