この記事をまとめると
■純正オーディオに採用されているハイエンドブランドを紹介
■各メーカーはそれぞれのクルマ専用にオーディオを開発している
■マツダの一部車種に関しては純正オーディオもかなりこだわっているのが特徴だ
ミュージシャンが語る純正採用の一流オーディオメーカーたち
自宅でオーディオシステムを組み上げ、いい音で音楽を聴ける環境にいる人は稀ではないだろうか。かつて、筆者がプロミュージシャンだった時代には自宅にちょっとしたオーディオ視聴用スペース、簡易スタジオスペースを持っていたのだけれど、いまではそれは叶わず、自宅で音楽を聴く際はブルートゥース接続のサウンドバー(TV用)、Hi-Res Audio搭載のPCスピーカーやスマホ+イヤフォンというのが現実だ。
※かつての自宅スタジオスペース。奥にはJBLのモニター
しかし、家でのリスニング環境が整っていなくても、プライベートなスペースでいい音で音楽を聴くことはできる。それが車内空間である。ただし、クルマに標準搭載される純正オーディオはコスト重視のものがほとんどで、ラジオを聴く程度ならまったく問題ないものの、音楽ファンがいい音で音楽を聴くには物足りない(例外あり。後述)。
標準搭載のオーディオで満足している人もいるだろうが、一度、コストがかけられた高級オーディオメーカーのプレミアムサウンドシステムを体験すれば、その違いに驚き、車内が上質なリスニングルームになることを実感できるだろう。
具体的には、音の広がり、ボーカルの定位、サウンドのクリアさと厚み、ベース(低音)のキレと締まりなどが異なり、圧倒的な音のよさに感動すら覚えるかも知れない。もちろん、防音設備の整った本格的なリスニング環境で聴くのとでは、走行する車内は走行ノイズなどによって不利なのは当然だが、それすらもノイズキャンセリングシステム、車速連動ボリュームコントロールなどで、ある程度は改善できるシステムもあるのだ。
車載される高級オーディオメーカーのプレミアムオーディオブランドとしてBOSE、JBLなら多くの人が聞いたことがある、知っている……はずだが、そのほかにも世界的なプレミアムオーディオブランドが車内用のシステムを用意している。例えば、マークレビンソン、ハーマンカードン、ディナウディオ、フォーカル、ロックフォードフォズゲートなどだ。
では、改めて標準搭載のオーディオとプレミアムオーディオサウンドシステムとの違いを説明すると、すでに述べたように、コストのかけ方がまったく違う。プレミアムオーディオサウンドシステムは、車両と同時開発され、車種専用のベストな設計にはスピーカーのマウント方法、専用アンプ、専門家による音のチューニングなどが含まれるとともに、スピーカーに使われる磁石やコイルなどの性能も遥か上になる。
かつて、キャデラックのBOSEサウンドシステムの取材で、マサチューセッツ州のBOSE本社を訪れ、開発中のキャデラックBOSEサウンドシステムについて現車で説明を受けたことがあるのだが、ドアマウントスピーカーの場合、ドア内部構造がBOSE専用となっていて、いわゆるデッドニングまで施されているこだわりに驚かされたものだ。だから大音量でも、ビビリなど出ないのである。
ここからは、そんなプレミアムサウンドシステムの主要メーカーと対応車種について紹介したい。
●BOSE(ボーズ)
ボーズはマサチューセッツ工科大学のボーズ博士が自身の研究によって製品化した、主にスピーカーを扱うプレミアムオーディオブランドだ。ライブ会場の901シリーズ、カフェの天井にある101シリーズのスピーカーを目にしたこともあるだろう。
ボーズは1980年代初めにすでに世界初の車種専用プレミアムサウンドシステムをリリース。現在はホンダ、マツダ、日産、三菱、キャデラック、ポルシェ、ルノーなどが純正採用している。繊細でクリアな高音、自然なボーカルを忠実再現する中音、そしてリッチでパワー感のある低音の再現性の素晴らしさで世界的に知られているが、とくに豊かな低音のキレ、締まりに定評があり、まるでコンサートホールにいるかのような音場再現も大きな特徴となる。
ちなみに、現行シビックだけでも右/左ハンドル、ファブリック/レザーシート、ハッチバック/セダンといったバリエーションによって、シビックの世界市場全体で見れば13種類の専用チューニングが施されているのだから音作りは徹底している。
日産ノートオーラでは、フロントシートのヘッドレストに内蔵した60mmの小型スピーカー( 1席につき2基)を用いたパーソナルプラスサウンドシステムを国産コンパクトカーに初採用。360°音に包まれているようなサウンドを8スピーカーで実現している。
●JBL(ジェービーエル)
ジェームス B ランシングにより1946年に設立されたアメリカの老舗スピーカーブランドがJBL。家庭用オーディオから映画館、コンサートホール、スタジオなど幅広い分野で定評があり、たとえば松任谷由実さんのコンサート会場でもJBLのスピーカーが無数に使われていたりする。
現在、同グループのマークレビンソンのカーオーディオもJBLから供給されている。開発中の車両で専用アンプからスピーカーに送る音のチューニングまでを行っている車載例では、トヨタのアルファード、bZ4X、ミライなどが挙げられる。