追い打ちを掛けるようにシエンタ、パッソ・セッテが登場
とはいえ、ミニバンのカテゴリーにいながら、繰り返すけれど、2列5人乗りの背高ワゴンというのが実際のところで、とりあえずこんなものもあります……という感じのカローラをベースとした3列シートミニバン風の1台でしかなかったのも事実。1代目よりはマシだった2代目が2007年に生産を終え、たった2代で消滅した理由は、しかしそれだけではない。
2003年には当時のミニバンブームに乗ってトヨタはシエンタ=コンパクトミニバンを華やかに登場させ、スパシオのウィークポイントでもあったシートアレンジの簡便さを「片手でポン」のアレンジで実現。エクステリアデザイン的にもキュートで、若い女性が飛びついたことはいうまでもなく大ヒット。スパシオと違い、2024年のいまでも人気の3代目が存在する長寿モデルとなっている。
そんなシエンタがあったから、スパシオはたまらない。何しろ車格的には下のシエンタのほうがホイールベースは長く、3列目席の空間もずっと広く使えて、例のシートアレンジもより簡単。しかも、1.5リッター同士のエンジンもシエンタ用のほうが新しく燃費もいい。それでシエンタより高価なのだからもはや立場なし。スパシオが優位なのは小まわり性ぐらいだったのである。
さらにスパシオの存亡に追い打ちをかけたのが、2004年登場の、ダイハツと共同開発した初代パッソ(ダイハツ版はブーン)の存在だ。当初は主に女性向けのハッチバックコンパクトカーでしかなかったものの、2008年末には無理矢理3列シートのパッソ・セッテを追加(ダイハツ版はブーン・ルミナス)。
そのハイライトは2列目席にあり、シートは150mmスライドするベンチタイプのみでフロア中央にはトンネルの出っ張りがあったものの、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準で、頭上に185mmはともかく、膝まわり方向には最大240mmもの、当時のノア&ヴォクシーを凌ぐスペースがあるのだから凄かった。
3列目席はさすがに緊急席的であり、2列目席ウォークインによる乗降性はまずまずだが、シートが平板で体育座りの姿勢を強要されるのは致し方ないところ(クッションが前下がりに感じられた)。膝まわりスペースはゆとりたっぷりの2列目席を前出しすればなんとか座れる膝まわり空間が出現するものの、座り心地、居心地は決して褒められたものではい……という印象だった。が、ハンモック的シートのスパシオよりはマシだったのだ。
荷室は床下収納があり、シエンタの反省もあって3列目席の格納操作がベルトを引くだけと圧倒的に楽で簡単なところが魅力ではあった。シエンタの存在はもちろん、価格的にもリーズナブルで、「とりあえず3列目席があり最大7人が乗れないでもない」パッソ・セッテの登場も、同門のスパシオの寿命を縮めた原因と言えるのではないか。
1994年のホンダ・オデッセイ、1996年のホンダ・ステップワゴンから始まった第一次ミニバンブームの後期には、そうしたなんちゃって3列シートの即席ミニバンが、他社からも続々と登場した時代であった。それは自動車メーカーだけの責任ではなく、需要と供給の関係で、ミニバンブームに乗っかりすぎた、とりあえず3列シートを買ってみよう……という発想に盛り上がったユーザーサイドにも責任はあるように思える。