この記事をまとめると
■レーシングカーは暑くてうるさいという印象だが現在のレーシングカーは快適だ
■現在のレーシングカーはエアコンとパワステを装備しているものがほとんど
■ただしラリーカーの一部ではエアコンを装備していないマシンも存在している
暑くてハンドルが重かったレーシングカーもいまでは快適
レーシングカーといえば「暑い」とか「うるさい」とか「ハンドルが重い」などを思い浮かべる人もいるかもしれないが、じつはそんなイメージは昔の話。現在、各カテゴリーで活躍している最新のレーシングカーは意外と快適なマシンとなっている。
たとえば、室内の暑さ対策でいえば、スーパーGTのGT500クラス車両はエアコンが装備されているほか、GT300クラスもマシンによるが、エアコンを装備している車両は少なくない。さらに、スーパー耐久に参戦しているマシンもエアコンを装備した車両が多くなっている。
いずれも頭部(ヘルメット内)や上半身、シート裏から身体に冷風を当てるようなスポット的なクーラーが主流だが、スーパー耐久のST-Zクラスで活躍するGT4車両などは、市販モデルと同様に室内を冷却するクーラーがそのまま装備されるなど、暑さ対策が行われている。
さらに、ステアリングの重さに関しても、現在のレーシングカーは「パワステ」が装備されており、昭和のレースシーンのように、競技終了後、ドライバーの腕がパンパンになることはない。
もちろん、室内音に関していえば、レーシングカーは軽量化を追求すべく、市販モデルのような遮音材/吸音材が切削されていることから、静かとはいえないうえ、正直、乗り心地も良いわけではないが、近年のレーシングカーは、クルマやタイヤの進化に合わせて、確実にドライバーの疲労やストレスが軽減されている。
一方、同じモータースポーツでも、ラリー競技用モデルは暑さ対策が行われていない。Rally2/R5などの国際モデルはエアコンレスが当たり前で、F1、スーパーGTを経て、全日本ラリー選手権で活躍するヘイッキ・コバライネン選手が「ドライバー人生でラリーカーがもっとも暑いクルマ」と語れば、新井大輝選手も「昨年まで乗っていたプジョー208 Rally2は、室内は暑いし、室内音もうるさかった」と語る。
さらに、GRヤリスを中心に国内規定の4WDモデルで争われるJN2クラス車両も、ベース車両の多くがエアコンレスとなっているほか、仮にベース車両にエアコンが装備されていたとしても、マシンの軽量化を追求すべく、エアコンを外すケースが多い。
しかも、レースシーンの場合、エアコンレスの車両では多くのドライバーがクールスーツを着用しているが、ラリーシーンではクールスーツを着用することはほとんどなく、奴田原文雄選手によれば、「マレーシアなどの暑い国でラリーをするときはクールスーツを着用したこともあったけど、国内に関しては使っていない。レースと違ってSSの走行時間はそんなに長くはないし、リエゾンではヘルメットを外して走行できるからね。暑いけど我慢している」とのことだ。
ちなみにJN3クラス、JN4クラス、JN5クラスのRPN車両、JN6クラスのAE車両は改造範囲が狭く、エアコンを外すことができないことから、競技中もエアコンの使用が可能である。もちろん、すべての動力をエンジンパワーに活用すべく、各クルーはSSでのエアコンをオフにしているが、リエゾンではエアコンを活用しており、夏場でも快適に移動できるようになっている。