GTを名乗らずともGTカーと呼べる車種もある!
そのGTカーの代表格といえば、古くはすでに取り上げたS130フェアレディZやトランザムなどがあり、トヨタ・ソアラもGTカーと呼べる性能、豪華さを備えていた。近年ではズバリ、GTの名を冠したメルセデスベンツAMG・GT、マセラティ・グランツーリズモ、同グランカブリオ、BMW8シリーズ、日本車ではレクサスLCなどが代表格だろう。
また、長距離ドライブに伴う大荷物の積載能力まで考えると、高性能ステーションワゴン、たとえばBMWアルピナのツーリング、アウディS4アバントなどもGTカーのカテゴリーに入れていいかも知れない。
では、「GTカー」としての資質をおさらいしてみると、長距離ドライブでの快適性が主で、そのためには高速走行で発揮される高性能がまず挙げられ、ゆえにクルージングのしやすさ、速度調整のしやすさ、登坂路や合流での余裕が可能になる。さらに高速クルージングでは絶大なるパワー、トルクから、エンジン回転が抑えられ、入念な遮音、防音対策と合わせた車内の静粛性に寄与。コストをかけたボディ、サスペンションによる乗り心地の良さももちろん提供されることになる。長距離移動は「GTカー」がラク……ということに間違いはない。
車内の快適性、広さで優位なミニバンにGTグレードがないのは、重心の高さによるところが大きい。やはり「GTカー」を名乗るには、スポーツカーとはやや異なる運転の楽しさはマストであり、高速クルージングでの横風などによる外乱を受けにくい低重心パッケージ=車高の低さも求められるからだろう。
と、現代の「GTカー」は輸入車を中心に超高価なクルマばかりで、国産車でGTを名乗るクルマは今や絶滅危惧種になりつつある。しかし、GTを名乗らずとも、「GTカー」と呼ぶに相応しい、適度な値段で手に入り、長距離移動も楽々な国産車を紹介すると、まずは434.5万円から手に入るスバル・レヴォーグSTIスポーツEXだ。そして希少なGTグレードを持つグランドツアラーとしては、456.94万円からの日産スカイラインGTなどが挙げられる。
今ではクロスオーバーモデル、SUV、ボックス型ミニバン全盛の時代だが、荷物をたっぷり積んだ長距離移動の機会が多く、しかし多人数乗車はしない、悪路を走る機会などまずない……というなら、懐かしくもある響きの「GTカー」に着目してみるのもいいかも知れない。もっとも、「GTカー」の存在を脅かす、静かで快適で視界爽快、長距離移動が楽で、意外なほどの安定感、「低重心感覚」を示してくれる、荷物がたっぷり積めるオールラウンダーな高性能クロスオーバーモデル、SUVが台頭し、人気を博している時代でもあるのだが……。