「海外製=悪」じゃない!
復活と廃止を繰り返す車種の多いメーカーはホンダだけだが、他社でも都合に応じて海外工場製の日本メーカー車を国内導入することはある。
具体的には、ピックアップトラックの三菱トライトンとトヨタ・ハイラックスはタイ製だ。コンパクトSUVのホンダWR-Vはインド製で、日産キックスはタイ製、スズキ・エスクードはハンガリー製になる。セダンのホンダ・アコードは、従来はアメリカ製だったが新型はタイ製だ。
以上のラインアップからもわかるとおり、日本メーカー製の輸入車には、国内で大量に売られる車種はない。輸入販売される日本メーカー車で、登録台数がもっとも多い車種はいまのところキックスだが、2023年の1カ月平均は約1300台に留まった。つまり、大量に販売する車種は、国内で生産されるのだ。
また、輸入車では受発注をシンプルに抑えたいため、グレードやオプションを豊富にそろえることは難しい。たとえば設計の新しいWR-Vも、エンジンと駆動方式は1種類で、グレードも3種類だ。生産ラインで装着するメーカーオプションは用意されず、選べるのは日本国内で装着するディーラーオプションだけになる。キックスには2WDと4WDがあり、メーカーオプションも選べるが、それでも選択肢は少数に限られる。
販売店は「輸入車の場合、納期が安定しないこともある。基本的には在庫販売で、国内生産車に比べると、売りにくいことも事実だ」としている。
このような事情により、国内市場に本気で取り組む車種は輸入車にならない。ラインアップはそろえたいが、国内で生産するには投資も必要で、いわば妥協できる車種を輸入に頼る。
これは消極的な発想に思えるが、クルマ好きのユーザーには、日本メーカーの輸入車にはメリットがある。販売台数は少なくても、個性的な車種が導入されるからだ。
たとえばトライトンやハイラックスのようなピックアップトラックは、日本では販売台数が限られるから、以前は「日本で買えない日本車」であった。それがいまは輸入措置によって日本でも手に入る。
今日の大半の日本メーカーは、世界販売台数の80%以上を海外で売る。海外市場には個性的で楽しい日本メーカー車も豊富に用意されるから、輸入を利用して、日本国内でも積極的に選べるようにして欲しい。