変わりつつあるインドネシア消費者のニーズ
街なかでよく見かける中国メーカーのICE車としては、市場参入が早かったこともあるが、ウーリンのモデルが圧倒的に多い。人気の高い多人数乗車のMPV(多目的車)となる、コルテズやコンフェロ、そしてコンパクトクロスオーバーとなるアルマズやアルベズがそれである。いったん市場撤退(ICE車のみのころ)したあと、最近再参入したチェリーではBEVもラインアップするオモダのICE車を多く見かけることができた。
ウーリンのMPVはタクシー車両としても採用されており、5年ほど使用してヤレヤレになった車両に試しに乗ってみた。走行距離は40万kmを超えており、さすがにボディのきしみや見た目のヨレヨレ感が強かったが、意外といっては大変失礼だが状態はそんなに悪くはなかった。
日本車の販売シェアはいまでも90%を超えている。そのなか、インドネシアの経済成長は著しく、「失われた30年」などといわれる日本では考えられないスピードで国民所得は向上しており、消費者意識の多様化も進んでいる。
街なかを走るBEVは、BYDがまだ本格的な販売をはじめていないこともあるのか、韓国のヒョンデ・アイオニック5が圧倒的に多い。ウーリンのアルマズあたりではHEVもラインアップしており、「BEVだから」という理由ではなく、当たり前のように街に溢れる日本車以外に乗りたいというニーズを中国系ICE車がくみ取っているのかもしれない。
筆者は、変わりつつあるインドネシア消費者のニーズを、日本車がくみ取り切れなくなってきている現れではないかとも見ている。まだまだインドネシアにおける日本車の地位は揺るぎないようにも見えるが、BEVではなくICE車となる中国メーカー車を意外なほど街なかで見かける現状は、長期的視野に立つと見逃せない動きなのかもしれない。