電気的CVTの緻密な制御による自然でスポーティな走行感覚
今回の新型はパワートレインの改良も大きなトピックとなっている。
基本的にはガソリンエンジンと2モーターを組み合わせたハイブリッドシステムとなっているが、内燃機関にも電動モーターにも大幅な仕様変更を行い、極めて効率が高くドライバビリティにも優れたパワートレインとなっている。
ガソリンエンジン部分は2リッター直列4気筒エンジンを直噴化し、アトキンソンサイクルで稼働させている。これに最高出力135kW、最大トルク335Nmの駆動用モーターを組み合わせ、さらに発電用ジェネレーターモーターとして120kW、68Nmのモーターをパラレルにマウントし、2モーターとして構成している。エンジンが発電専用として稼働するシリーズ方式と駆動モーターと混流しアシストし合うシリーズパラレル方式ハイブリッドドライブ、またエンジンだけで走行するエンジンドライブモードが最適制御で切り替えられる。
初めはEVモードで走りはじめ、バッテリーの充電が十分になされていれば最大3.5kmほどEVモードで走行可能だという。
バッテリー充電量が不足するとエンジンが始動し発電モードに切り替わるが、その際のエンジン振動は少なく、またその時点での走行パターンに違和感を与えないような回転数で稼働するので、ハイブリッド車特有のエンジンが過回転するような現象は見られない。
逆に、アクセル全開でフルパワーを引き出す場面でもエンジン回転数は自然に高まる印象で違和感がない。これは新開発のジェネレーターモーターが効率よく発電できること、また電気的CVTとして意図的に変速モードを演出できるようになったからだ。従来のようにエンジン回転だけが先行し、速度があとから高まってくるというようなCVT的制御が陰を潜めたため、よりスポーティな走行感覚が得られるようになったわけだ。
電気的CVTと呼ばれているが、それは一般的なベルトドライブのCVTトランスミッションを備えているわけではない。駆動モーターを電気的に操り、変速しているかのような制御としているだけで、実際には変速ギアシステムがあるわけではない。他社でも同様なシステムが多いが、クルマ好きから敬遠されがちなCVTトランスミッションをあえて名乗る必要はないのでは、と感じるところだ。
ノーマル、エコ、スポーツといったドライブモードの変更でアクセルレスポンス、トルクピックアップ特性などが変更するが、スポーツモードで全開加速するとエンジンサウンドがスピーカーから創出され、迫力ある左右ウンドとして聞こえてきた。また、エンジン回転数にも意図的にステップ比が刻まれ、さも変速しているかのような感覚を得られる。
乗り心地に関しては、路面の継ぎ目や段差通過時にハーシュネス(突き上げ)が強く感じられ、先代の上質な乗り味とは異なっていた。これが意図的な乗り味なのか、タイヤやサスペンションの変更によるものなのかは不明だが、感触としては先代の乗り味に一日の長があるように感じる。
SUVが市中に溢れ、ホンダ車のラインアップからもセダンが失われつつあるが、新型アコードはセダンの復権を果たせるのか、今後の動向を注視していきたい。
なお、新型アコードの販売目標は200台/月で、価格は544万9400円となるそうだ。