この記事をまとめると
■歩道の高さが車道から15cm以上あったところの高さを最近は5cm程度に変更している
■高さが低くなったことで高齢者や視覚障害の人、自転車や車椅子の通行人にも恩恵がある
■バリアフリーといいながら、疑問を残すような作りがまだまだ多いのが実情だ
あの段差、じつは低くなっていた!
道路で、車道と歩道を明確に区別する構造が、車道より段差を高くつくられている歩道だ。車道に比べ、その高さは15cm以上が基本とされてきた。一方、近年では、5cm程度の歩道が採用されはじめている。理由は、高齢者や障害者の移動のしやすさを重視したためだ。
歩道を高く作ることの効用は、クルマが誤って歩道へ侵入するのを防止する/雨水が歩道や住宅地に侵入するのを防ぐ/視覚障碍者などが歩道と車道の区別を識別しやすくなるといった点があげられている。
たとえば、首都高速では路肩が十分に確保できず、かつ高架区間が多いため、万一の事故でクルマが高架下へ落ちないよう、縁石の形状を工夫し、タイヤがはまって飛び越えにくくしている。その手法は、景観を重視するためガードレールを設置していない都内の銀座などの歩道の段差にも活用されている。
雨水が歩道へ流れ込まないことも、水たまりによって靴が濡れにくくなったり、住宅に雨水が流れ込んだりするのを防ぐうえで役立つはずだ。
ひとりで白杖を使って歩く視覚障害の人もいる。路地で車道を歩いてしまっている場面に遭遇し、歩道へ案内した経験が私にはある。目が見えない状態で、ひとりで歩くことの危険性は計り知れない。
そのうえで、歩道の段差が従来どおり15cmほどと高いと、クルマが歩道を通過して乗り入れるガソリンスタンドや車庫への誘導部分で、歩道を低くする際、その傾斜部分が歪んで、かえって歩きにくくなったり、車椅子やベビーカーが車道へ出てしまいそうになったりしかねない。段差の低い歩道であれば、傾斜の歪みも少なくなり、弊害が減るだろう。
高齢者や障がい者が公共交通機関を利用するうえでの交通バリアフリー法が2000年に施行され、2006年には、高齢者や障がい者が移動を円滑にできるようバリアフリー法が施行された。そうした一連の、ユニバーサルデザインの思想が反映された措置といえる。
だが、街を歩けば、まだ十分でないのも事実だ。視覚障害者のための点字ブロックも、なぜ歩道のない道路には敷設されないのか、鉄道の駅では、なぜ線路に近いホーム上に点字ブロックが敷設されているのか、疑問は尽きない。
ユニバーサルデザインやバリアフリーの取り組みは、法令が定められたからやるのではなく、そこを利用する人の立場で考え、改善することが前提といえるのではないか。