【試乗】PHEV・ディーゼル・ガソリンでキャラの違いは明白! 新型Eクラスは伝統と革新が見事に融合していた (2/2ページ)

やや固めな乗り心地も動力性能や静かな室内など質感は高い

 また、このE 350 eには20インチのホイール/タイヤがセットで組み込まれているため、通常の19インチ仕様と比べても、バネ下が固く感じるのは仕方がないところだろう。

 一般道を走る限りにおいては、この足の固さが若干気になったが、それでも動力性能や静かな室内など質感が高く、EQシリーズに勝るとも劣らない静寂な質感を実現している。

 試乗車にはオプションながら後輪操舵システムが備わっていた。これは低速では前輪とは逆相に最大4.5度まで転舵することができ、最小回転半径は5.4メートルと極めて小さく設定されている。国産コンパクトカー並みの最小回転半径は特筆に値するものだ。速度が上がると同相に転舵されるようになり、操縦安定性をより一層高めている。

 ステアリング特性のリニアリティやパワートレインのドライバビリティのよさなど、極めてうまく仕付けられ、本当に扱いやすく走りやすい。狭い日本の道でも操作性がよく、運転のしやすいクルマになっていることが確認できた。おそらく完全電気自動車のEQEに踏み込めないような使用環境にあるユーザーであれば、このPHEVの存在は大きな魅力となるに違いない。PHEV化されることによる重量増は約200kg。販売価格は990万円台となっていて、 ガソリンやディーゼルのISGモデルと比べても割高な印象は受けない。

 ちなみに試乗車のE 350 eスポーツエディションスターの場合、通常のE 200モデルでオプションとなるAMGパッケージ約60万円分が標準装備となり、国や東京都、各自治体の補助金などを加えると、実質的にはほかのモデルと比べても価格差はほとんどないという。

 残念なのはPHEVバッテリーにより、リヤのトランクのフロアが若干高く配置され、それにより荷室容量が犠牲になっていることだ。マイルドハイブリッドのセダンであればゴルフバック3つが積載可能なところ、PHEVではふたつが搭載できるということだ。ただし、リヤシートバックは分割可倒式でトラックスルーが可能なので、そうなると荷室容量はかなり大きくなる。燃料タンク容量は50リッター確保されており、燃料消費率はWLTCモードで12.7km/Lとなっていて、EVモードの112kmを合わせると最大航続距離は747km前後となる。

 PHEVシステムには、V2H(ビークルtoホーム)やV2L(ビークルtoロード)にも対応しているほか、CHAdeMOの急速充電にも対応しており、インフラに対する適合性も高いという部分で歓迎されることになる。

 次に、ディーゼル+ISGのE 220 dセダンに試乗してみる。トランスミッションは同じく9速ATで、ドライブモードはエコ、ノーマル、スポーツ、インディビジュアルとなっているが、サスペンションはコンベンショナルなスプリング/ダンバーユニットのため、足まわりの固さは変化しない。ただ、トランスミッションの変速制御やステアリングの応答性などはモードによって若干異なり、エコモードでは軽くハンドルを切ることができ、女性にも好まれる特性となっている。

 E 350 eで気になった路面のハーシュは軽減していて、ピレリのタイヤ特性によるところも大きいといえるだろう。全体としては非常に軽快感のあるハンドリングで、一方で車体の作り込みや雰囲気などは重厚で質感の高い走りを体感することができた。

 E 200/220シリーズは後輪操舵を選択できないのでE 350 eよりも最小回転半径は大きくなるが、それでも前輪の最大切れ角は39度と大きく取れ、一般的な同クラスの車両と比べたら最小回転半径はずっと小さい。 この辺はメルセデス・ベンツ車が古くから持つ特徴をうまく引き継いでいるといえる。エンジンが縦置きだからこそできるこうした機能性の高さが引き継がれているのは、ユーザーとしてもうれしい限りだろう。

 最後にワゴンのE 200ステーションワゴンへ乗り込んでみる。こちらはガソリン直噴ターボエンジンと組み合わされている。E 200のエンジンはガソリン直噴仕様でも車外にいると多少ガラガラ音を発している。E 220 dはディーゼルとしては静かだが、ガソリンも同じような音色、音量で音だけで区別するのは難しいと思えるほどだ。そのノイズは室内へはうまく高効率に遮断されていて、室内にいればディーゼルもガソリンエンジンも静かに感じるものとなっている。

 エンジンの重量はガソリンエンジンの方がディーゼルより軽い。車体はステーションワゴンのほうが重くなるのだが、結果としてガソリン搭載のステーションワゴンは1910kg。ディーゼル搭載のセダンは1920kgでワゴンよりも10kgほど重量が重くなっている。

 その結果、前後重量バランスに優れているワゴンは、荷室容量が最大1830リットルにもなり、かなりの荷物を搭載することが可能だ。5人乗車時でもゴルフバックなら3つを格納することができ、リヤシートバックを倒せば、スノーボードやスキー板など大きなものも搭載することができる。ステーションワゴンは昔から「たくさん積めるワゴン」として実用性の高さが評判だった。そうした特徴を新型も確実に引き継いでくれているのだ。

 Eクラスといえば「ステーションワゴンがベスト」という印象を持っているユーザーも多く、今回EVではなく内燃機関を備えたマイルドハイブリッドとしてステーションワゴンが追加されたことは、大きな魅力として再び多くのユーザーの心を掴むことになるだろう。

 E 350 eそしてE 220 dのセダンとE 200のステーションワゴン。これらはいずれも確立されたキャラクターをもち、価格差も大きくないため、 ユーザーは選択に大いに頭を悩ますことになりそうだ。

 ただ、それぞれに特徴が明確に差別化されている部分もあり、たとえばPHEVならEV的な使用が可能であるということ、ディーゼルなら燃料代が安くなるということ、ガソリンエンジン仕様ならば軽量でバランスのいい軽快な走りが得られること。こうした差が明確に与えられていることも事実であり、今後どのような販売割合でEクラスが選択されていくのかも注目して見ていきたいところだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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