【試乗】PHEV・ディーゼル・ガソリンでキャラの違いは明白! 新型Eクラスは伝統と革新が見事に融合していた (1/2ページ)

この記事をまとめると

■メルセデス・ベンツの新型Eクラスにレーシングドライバーの中谷明彦さんが試乗した

■PHEVのE 350 eは十分なスペックを持っているが一般道はほぼEV走行でまかなえた

■E 350eとE 220 dとE 200はそれぞれ異なるキャラクターを確立させている

フルモデルチェンジしても伝統を継承する新型Eクラス

 メルセデス・ベンツEクラスは世界中で大きなシェアを獲得しているミドルサイズセダンだ。今回、フルモデルチェンジを受け、日本国内にも登場した。

 Eクラスは世界累計で1600万台以上販売され、メルセデス・ベンツの屋台骨を支える中心的なモデルとしても知られている。セダン、そしてステーションワゴンなど、実用性も高く、ドイツではタクシーに使用される車両のほとんどがEクラスであったり、また筆者自身もW124型のEクラスステーションワゴン「320TE」を所有していたこともあった。

 今回の進化でパワートレインには2リッター直4直噴ディーゼルターボエンジン+ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)を搭載するマイルドハイブリッド仕様と、同じく2リッター直4直噴ガソリンターボエンジンにISGを備えたガソリンエンジン搭載車、さらに25.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するPHEV(プラグインハイブリッド)仕様が新たにラインアップに加わり、シリーズを構成している。いずれも9速のフルオートマチックトランスミッションを備え、後輪で駆動するFRモデルとなっており、Eクラスの伝統を継承している形だ。

 今回試乗するのは、PHEVのE 350 eのセダンと、ガソリンターボエンジン+ISG搭載のE 200ステーションワゴン、さらにベーシックなモデルとなるディーゼルターボエンジン+ISG搭載のE 220 dセダンの3モデルである。

 まず、PHEVのE 350 eに試乗してみる。外観的にはいずれも統一性が図られていて、新世代のメルセデス・ベンツらしく、清楚で品のあるデザインだ。また、フル電動モデルのEQシリーズのような電動化をアピールするフロントグリルをもち、先進さに伝統が融合されたような美しいデザインでまとめあげられている。

 新型となったW214型はセダンで見ると全長+20mm、全幅+30mm、全高も+15mmと、先代となったW213型Eクラスよりもひとまわり大きくなっているが、その拡大分のすべてが2960mmとなったホイールベースも含めて、室内スペース拡大のために使われているという。

 クルマに乗り込むと、その新デザインとなったインストゥルメントパネルが新世代のクルマであることを物語っている。ほかのメルセデス・ベンツやEQシリーズなどと同様に、カラー液晶のメーターがドライバー正面に配置され、ダッシュボード中央部には大きな液晶モニターが備えられている。 さらに、今回試乗する車両にはすべてデジタルインテリアパッケージが装備されており、いずれもスーパーモニターと呼ばれる、助手席側にも大きな液晶画面が用意されていて、EQシリーズとほぼ同レベルの先進的なコネクテッド機能を備えている。

 しかし、シートの作りやステアリングホイールのスイッチ類など、従来のメルセデスベンツの仕組みを引き継いでいて、旧型モデルから乗り換えてもその操作に戸惑うことがないようにあつらえられている。

 ブレーキペダルを踏み込みスタートストップボタンを押してシステムを起動する。デフォルトではエレクトリックモードとなっており(始動時のバッテリー充電残量レベルにもよるが)、走り始めはEVとして走行し始める。バッテリーの容量は25.4kWhで、EVのEQEよりも小型だが、通常のマイルドハイブリッドモデルよりは大きなバッテリー容量となっていて、WLTCモードも等価EVレンジでEV航続距離として112kmを達成できているとして公表されている。

 E 350 eの駆動モーターは、エンジンとトランスミッションの間に配置され、95kWの最高出力を発生する。また、最大トルクは440Nmを0回転から2100回転まで発揮でき、EV走行時においては極めてスムースで力強く、静かな走り出しが可能だ。

 ちなみにEVモードは時速130〜140km前後まで持続可能であり、日本国内であれば高速道路の最高速度120km区間も含めてすべてEVとして扱えるのがうれしいところ。

 一方で、組み合わされるガソリンターボエンジンは、2リッター直4直噴にターボチャージャーを装着したもので、最高出力は150kWを6100回転で発生する。最大トルクは320Nmを2000〜4000回転で発生。システム総合出力としては単純にモーターとエンジンの出力をコンバインしたものとはならないが、それでも必要にして十分以上の出力を備えていると言えるだろう。

 今回は一般道での試乗ゆえ、速度は低く抑えなければならないが、スペック的には十分な能力、性能を備えているということは承知しておく必要があるだろう。ちなみに車体の重量は2210kgとなり、それはバッテリーや駆動モーターの重さが作用したものであるが、バッテリー搭載位置などから重心が低く、また前後重量配分も向上させられているので、ハンドリングや操縦安定性に及ぼす影響は極めて少ないと言えるだろう。

 一般道ではほぼEVモードで終始する。ドライブモードはコンフォート、スポーツ、エレクトリック、そしてバッテリー充電やエレクトリックとハイブリッドさらにインディビディアルと備わっている。スポーツモード選択時はエンジンが始動し、エンジンパワーとバッテリー駆動のモーターパワーの両方が適切に管理され発揮するようになっている。また、エンジンが稼働すればバッテリーへの充電が行われ、バッテリー残量が低下したときは、このスポーツモードを積極的に使用することで駆動バッテリーの充電量を増やしEVレンジを引き伸ばすこともできる。

 また、スポーツモードではステアリングのレスポンスやトランスミッションの変速プログラム、サスペンション設定がスポーティにセットアップされ、フラットライドな乗り味を提供してくれる。

 ただ、一般道においては、路面の段差や繋ぎ目などでハーシュがきつく感じられ、乗り心地は固めである。装着されているタイヤがミシュラン・パイロットスポーツのeプライマシーという電動車用に合わせて設計されたタイヤ、つまり重量の重い車両用として開発された銘柄であったことも要因として考えられるが、乗り味は全体としてハードで固め。コンフォートモードを選択し、ショックアブソーバーの減衰力を低めて走ってもハーシュの強さはそれほど変わらないため、タイヤ自体のサイド剛性が強く路面反力が減衰されないまま伝わってくるのではないかと思われる。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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