この記事をまとめると
■クルマにとってスタイリングデザインは重要な要素だがそれはトラックでも同様
■機能を優先しながらも独創性を大切にするトラックのデザイン
■技術の進化や安全意識の高まりに合わせて今後のトラックのデザインがどう変化していくのかが非常に楽しみだ
機能性や寸法だけじゃないデザインの魅力
クルマにとってスタイリングデザインは重要だ。あの超人気車種、トヨタ・プリウスだって先代は奇抜すぎるデザインで、かなり好みがわかれたことを覚えているだろう。
トラックの場合は機能優先でデザインなんか二の次だと思っている人も多いだろうが、実際にはそうでもないのである。じつはトラックメーカーでも、かなりデザインには気を配っている。ブランドイメージを確立する上で、フロントマスクは重要だから、時代を追うごとにフロントグリルは大きく大胆なデザインに変化してきている。
トラックの場合、ヘッドライトの高さなど保安基準などの規制によって受ける制約もある。キャビンの外寸も上限があり、室内スペースや衝突安全性の確保など、クリアしなければならない要素を含めながら、機能性やデザイン性が盛り込まれているのである。
トラックはもともとフロントにエンジンを置き、その後ろにキャビンがあって荷台へと続く、ボンネット型のキャブ形状から始まった。そこからスペース効率を高めたキャブオーバー型が誕生し、エンジンの上にキャビンが載せられる構造が日本や欧州では主流となっていった。キャブオーバー型はキャブ周辺の視界が確保しやすく、車体に対してあまり余裕がない道路を走行する際にも、車両感覚が掴みやすく、周辺の状況にも対応しやすいのがメリットだ。
これは、日本ではトラックメーカーとしては馴染みのないルノーが最初に始めたといわれている。合理性を好むお国柄のメーカーらしく、ルノートラックはほかのメーカーに先駆けてこうしたアイディアを盛り込んでおり、最近のトラックでもデザインは独創性を感じさせる。
道路や敷地に余裕のある北米では、大型トラックはいまだにボンネットタイプのトラックやトラクターが主流だ。車体の全長は長くなるが、空気抵抗が低く直進安定性にも優れるのが大きなメリットだからだ。
そうした基本のシルエットはあまり変わらないが、近年ではより洗練されたデザインを取り入れて、空気抵抗の少ないキャビンを作り上げている。
じつは欧州ではキャブオーバーでもさらにルーフを高くしたハイキャブタイプ(ハイルーフ)が増えている。日本の場合は高さ制限(3.8m)があるので、欧州とは規格が異なるが、最近は日本向けにもハイキャブ仕様を用意するようになってきた。
バンパーやコーナーパネルをメッキにして、カスタムするトラックドライバーも日本では珍しくないが、欧州でも北米でも、自分のトラックをカスタムして主張するドライバーは多い。そんなドライバーたちに支持されるためにも、デザインにこだわった姿勢は必要だろう。
今後は燃費性能のために空力を高めていくのか? 自動運転に向けて最適化していくのか? トラックのデザインがどう変化していくのか楽しみに見守っていこう。