自動運転よりも先に必要なのは「ドライバー異常対応システム」! いち早く大型車への搭載を促進すべき

この記事をまとめると

■運転中にドライバーの体調が急変することは多いにあり得る

■各メーカーはそのような状況に対応する技術を開発している

■大型車の「ドライバー異常時対応システム」について解説

ドライバーのまぶたの動きをモニタリングする車両も

 クルマや鉄道、航空機などのモビリティは基本的には操縦する人間が必要だ。東京では「ゆりかもめ」という無人の完全自動運転列車も運行しているが、あれは限られたエリアの低速車両だから可能になったもの。

 いずれは完全自動運転のバスやトラックが登場して普及するのだろうけれど、道路は生き物と言っても差し支えないほど変化に満ちているだけに、完全に運転を自動化できるまでには相当な時間がかかりそうだ。

 しかし、ドライバーは人間、それも平均年齢が上昇しているように、高齢ドライバーの比率が高くなっている。そうなると持病を持っている人だけでなく、ドライバー全般のリスクとして運転中に体調が急変することは多いにあり得るのだ。

 つい先日も、東北で高速バスのドライバーが体調を崩し、反対車線を超えて擁壁に衝突してしまうという事故を起こしている。

 こうした事態に対応するために開発されたのが、ドライバー異常時対応システムだ。鉄道には、運転士に体調急変などが起こった際には自動停止する「デッドマン装置」と言われるものが備わっている。具体的には、運転中はつねに押していなければ走行できないスイッチなどを設け、もし運転士が何らかの原因で手足をスイッチから離すと、車両が停止するというものだ。

 一方、ドライバー異常時対応システムは、レールのない道路だけに鉄道のデッドマン装置よりもかなり複雑だ。道路は平坦で真っ直ぐとは限らないし、つねに押し続けなければいけないスイッチを新たに設けるのも難しい。乗用車にも一部で導入が進んでいるが、トラックのそれとは若干システムが異なる。もっともこの分野で進んでいるのは、マツダだろう。

 CX-60に搭載されているドライバー異常時対応システムは、ドライバーモニタリングシステムと連動して機能するもので、メーターカウルに組み込まれたカメラでドライバーの顔の各部位をモニタリングしている。そして、体調急変を検知するとハザードとブレーキランプを点滅させてホーンも鳴らし車両を停止させ、ドアロックを解除してヘルプネットに自動的に接続して救援を呼んでくれるのだ。

 トラックの場合もメーターカウル付近にカメラを組み込み、ドライバーのまぶたの動きなどをモニタリングして、視線移動が減ったりまぶたが閉じている時間が長くなると、警報を出して休憩を促すシステムを搭載している車両が増えてきた。

 大型バスでは最前列の乗客席の頭上に緊急停止スイッチがあり、バス運転手が体調急変などで運転操作が不能と判断し、スイッチを押せばやはりホーンとハザードを点滅させながら自動停止するシステムが導入され始めている。

 本来、自動運転よりもこうした安全装備を優先して実用化、搭載すべきものではないだろうか。ドライバーの負担を減らす、という意味ではレベル2のACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール=前走車と一定の距離を保って走行する機能)も疲労を軽減してくれるが、同時に眠気を誘発する可能性もある。たとえば三菱ふそうスーパーグレートにはレベル2の自動運転機能が導入されているが、ドライバーがステアリングを握っていないと判断すれば、やはり自動的に停車するようになっているのだ。

 これからは居眠りや脇見運転による悲惨な交通事故も減少していくことだろう。


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