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70年の歴史のどこを切っても伝説の金太郎飴状態! メルセデス・ベンツの溺愛っぷりが伝わる「SL」はやっぱりスゴイ (2/2ページ)

70年の歴史のどこを切っても伝説の金太郎飴状態! メルセデス・ベンツの溺愛っぷりが伝わる「SL」はやっぱりスゴイ

この記事をまとめると

■メルセデス・ベンツのSLは生誕70周年を迎えた

■SLはもともとレースで勝つための車両を市販化したことから始まった

■1960年代から北米での販売台数が増えたことで人気はより高まった

メルセデス・ベンツのスペシャルモデル「SL」とは

 過日、メルセデス・ベンツのSLがなんと生誕70周年を迎えました。同社が作るモデルのなかで、もっとも長く作られていることになり、現行モデルはAMGブランドになりながらも7代目という快挙! ご存じのとおり、SLはスポーティでラグジュアリーなオープンカーの代名詞であり、広く大衆に愛される普及モデルではありません。にもかかわらず、ここまでのご長寿モデルとなった理由はどこにあるのか。歴代モデルを振り返って、その秘密を探ってみましょう。

SLは生粋のレーシングカーが出発点

 1950年、メルセデス・ベンツが世界プロトタイプレース向けに作った300SL(W194)こそが長いSLヒストリーの出発点です。エンジンは同社が持っていたちょっと古い3リッターSOHC直列6気筒M194ユニットを搭載しつつ、アルミ管によるスペースフレームシャシーとこれまた軽量なアルミボディを架装。

 ワークス活動用に10台のみが作られ、カレラ・パナメリカーナ・メヒコという過酷なレースで優勝するなど、メルセデス・ベンツにとって、あるいはクルマ好きにSLの名を特別なものにした立役者にほかなりません。

 ちなみに、いまでも超有名なガルウィングドアはこの300SLが発祥で、フレームの都合上サイドシルが高くなってしまったため、やむなく上に開くドアを採用したというのが由縁です。

 当時、メルセデス・ベンツはレーシングカーを市販しようとは考えていなかった模様ですが、アメリカのディーラーが「こりゃ売れる!」と1000台におよぶ確注を本社にぶつけると、目の色を変えてロードゴーイングSLの開発に着手しました。で、1954年に生まれたのが超有名な300SLガルウィング(W198)だったのです。

 コードナンバーが示すとおり、レーシングカーとはシルエットが似通っているものの、中身はまったくの別物。直6SOHCは同じ3リッターでしたが、機械式燃料噴射を市販車で初めて採用すると最高出力215馬力/5800rpm、最大トルクは28kgm/4600rpmを発揮して、最高速は当時最速といってもいい260km/hをマーク! そりゃ石原裕次郎や力道山だって「ほすぃ~」となるにきまってます。

 なお、300SL登場と同時に190SL(R121)という廉価版SLもリリースされました。いまでいうSLKのような立ち位置だったのでしょうが、最初からオープンモデルであり(300SLのオープンモデル「ロードスター」は1957年にラインアップ)、気軽にドライブできることも手伝って、兄貴分よりも売れ行きはよかった模様。なお、SLを名乗りながら2代目は1963年の230SLが継ぐことになり、そういう意味でもSLKっぽいのかもしれません。

アメリカこそSL無双伝説の舞台

 1960年代に入ると、さすがに初代SLの流線形スタイルにも古臭さが漂いはじめ、また世界的にクルマの衝突安全性が取りざたされるようになり、メルセデス・ベンツはSLの刷新を実行。

 1963年、フランス人デザイナーのポール・ブラック(W108/ W115等の縦目ベンツも彼の作品です)をチーフスタイリストに起用して、かの有名な「パゴダルーフ」なるハードトップを装備した230SL(W113)を発売したのです。ちなみに、パゴダとは仏教に関わる建築物で庇の両端が反り上がった屋根を表す建築用語。ルーフの中央を凹ますことで空力性能に寄与しつつ、低重心化を狙ったものとされています。

 エンジンは2.3リッターからスタートし、2.5リッター、2.8リッターまで発展した直列6気筒SOHCで、それぞれ150~170馬力を発揮。自社製4速ATはいくらかクセのあるもので、シフトチェンジの際にコツを使ってやらないと「すぐ壊れる」代物だったとか。

 また、250SLにはメルセデス・ベンツの安全思想が盛り込まれ、折りたたみ式ステアリングに大型パッドが追加されたことをはじめ、金属製だったミラーやレバーが樹脂製に変更されたり、ダッシュボードそのものが凹んだデザインとなるなど、乗員の衝撃保護を前面に打ち出しています。

 この頃になると北米仕様が確立されており、ライトやオーバーライダーといったスタイリングだけでなく、排ガス対策のエンジン設定やギヤスケジュールもヨーロッパ仕様とは異なったものに。これらのノウハウは3代目SL(R107)で大いに役立ったとされています。

 R107の登場は1971年で、世界的に排ガスや安全性が声高に叫ばれていた時代。メルセデスベンツは230SLのときに用いた「サルーンからのシャシー流用」を再び行い、W110(通称:羽ベン)に祖を持つW114のシャシーをサクッと作り変えてみせました。いわば1950年代生まれのシャシーですから、R107の乗り味が「古臭い」といわれたのも致し方ないかと。また、排ガス対策でのパワーロスを補うよう、エンジンが3.5~5.6リッターのV8へと大型化されているのも特徴でしょう。

 そして、ホイールベースを245mmも延長したハードトップクーペ、SLCがラインアップしたのもR107の大きなトピック。延長分はリヤシートのスペースへと充てられ、+2とはいえかなり快適な空間が得られました。

 このホイールベースを運動性のメリットと捉えたのか、SLCはラリーイベントにも数多く出場して優勝したことも。もっとも、当時のヤナセによると、SLCユーザーのほとんどが「ベンツマニア」で、よくも悪くも「変わり者」だったとのこと。

 なお、W113/R107ともに北米で大ヒットし、とりわけR107は映画やテレビに引っ張りだこだったこと、ご承知のとおりです。善玉が乗りこなすより、犯人や悪党が乗りつける印象が強いのは筆者だけでしょうか(笑)。

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