70年の歴史のどこを切っても伝説の金太郎飴状態! メルセデス・ベンツの溺愛っぷりが伝わる「SL」はやっぱりスゴイ (2/2ページ)

代を重ねるごとに孤高のオープンスポーツへ

4~6代目はハイテク&ハイパフォーマンスがキーワードに

 北米で大ヒットしたとはいえ、旧態然としたシャシーやSL専用設計部品の多さなどから、次第にライバルがその座を脅かし始めた1980年代後半。なんといってもR107は18年もの長きにわたって生産されていたので、それも致し方ありません。で、1989年に登場した4代目(R129)はブランクを打ち破るかのようにハイテク装備満載! 自動で飛び出すロールバーやトラクションコントロール、あるいは電子制御サスペンションなど当時としてもメガ盛りだったこと疑いようもありません。

 エンジンは、当初3リッター直6SOHC12V(最高出力191馬力/最大トルク26.5kgm)の300SL、同DOHC24V(最高出力234馬力/最大トルク27.8kgm)の300SL-24、そして5リッター V8DOHC32V(最高出力326馬力/最大トルク45.9kgm)の500SLの3タイプ。次いで、6リッターのV12を積んだ600SLや2.8リッター直6の280SL、3.2リッターの直6とV6の320SLなどなど、全世代を通じてもR129ほど豊富なラインアップはありませんでした。

 また、AMGをはじめ、ブラバスやロリンザー、ケーニッヒといったスペシャルカーファクトリーが大挙してカスタムマシンを作ったのも4代目が嚆矢となったこと間違いないでしょう。なかでもV12を7.3リッターまでスープアップしたものは、それこそ目玉が置いていかれるような加速だったこと、いまでも忘れられません。

 加速といえば、2001年に登場した5代目(R230)もSL史上初めてターボを搭載したモデル、SL65AMGがありました。シャシーはほぼほぼ先代モデルを改良したものながら、金属製折りたたみ式屋根=バリオルーフを装備したことには「よく詰め込んだものだ」と感心することしきり。

 そのぶん、トランクスペースが割を食ってしまい、ゴルフバッグ2個がギリ、というかキツキツになりましたね。

 ただ、5代目SLと同時期にSLRマクラーレンなんて超ド級モデルが登場したものですから、本家SLの影が薄くなってしまった印象は否めません。

 F1のセーフティカーとなって面目は保ったのかもしれませんが、およそ10年という生産期間で6代目にバトンタッチ。R129の後を継いでのハイパフォーマンスというという割に、なんとなく不遇な世代だったような印象です。

 そして、R230デビューの10年後、2011年には6代目のR231が登場。最大の特徴はメルセデス・ベンツ量産車初のオールアルミモノコックを採用し、先代から140kgもの軽量化を実現したことでしょうか。

 むろん、この時代のことですからハイテクも安全装備、ドライバーサポート、さらにはインフォテイメントシステムなどメガ盛りを通り越して全部載せにほど近いスペックです。

 エンジンは3.5リッターのV6(306馬力)にはじまって、4.7リッター(435馬力)と5.5リッター(537馬力)のV8、そして6リッターV12(630馬力)など、R129に次ぐバリエーション。ちなみに、SL63AMGはオプションパッケージを装着すれば537→564馬力へと向上し、0-100km/h加速も4.3→4.2秒まで速くなるなど、「オレのSL」に乗りたいユーザーには大好評だったとか。

 また、ラグジュアリーカーという称号だけでは飽き足らないユーザーのために、特別仕様や限定車が多数生まれたのもR230の特徴かもしれません。メルセデス・ベンツのデザインコンフィギュレーションサービス「デジグノ」を駆使した2LOOK Editionやミッレミリア優勝60周年記念モデルのSL350 Mille Miglia 417(R129でも似たような特装車がありました)、あるいは2015年にはF1完全制覇(ドライバー&コンストラクター)を記念したSL63「World Championship 2014 Collector’s Edition」など、メルセデスベンツがいかにSLを溺愛しているかがよくわかります(笑)。

7代目はAMGブランド専売モデルとして大進化

 きっかり6代目デビューから10年後の2021年、7代目SL(R232)が発売されたのですが、今度はメルセデスブランドではなくAMGとして登場することになりました。自動車にとってEVやらなにやら激動の時代を迎えてのことですから、熟慮の末のマーケット戦略が垣間見えるかと。

 それでも、発売当初からSL史上初の全輪駆動&操舵を採用し、発売翌年には量産車では世界初となる48V電気システムを電源とする電動ターボチャージャー「エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー」を組みこんだSL43をリリースするなど、新時代と真っ向からの対決姿勢(笑)。

 また、シャシーも進化していてAMG(とメルセデス・ベンツ)が開発したロードスターアーキテクチャーという新機軸を投入。おかげで後席のスペースが拡大されたり、足まわりの設計自由度が高まるなど、既存シャシーの流用をしていた時代とはまったく異なる力の入れっぷり。やはり、栄光のSLといえども、ダウンサイジングとかエコといった趨勢に歯向かうにはこれくらい頑張らないと生き残れないのかもしれません。

 また、R232のスタイリングで話題になったパナメリカーナグリルというのは、上述のカレラ・パナメリカーナ・メヒコで走った初代300SLのグリルや、フロントガラスのプロテクター(当時のレースでハゲタカが激突、コドライバーが大けがをしました)をモチーフとしたもの。7代目に至っての先祖がえりというか、リスペクトする姿勢に胸うたれたSLファンも少なくないでしょう。

 なお、最新のSLは2023年に発表されたメルセデスAMG SL63 4MATIC+ Motorsport Collectors Edition。

 メルセデスベンツのF1マシンをモチーフにしたデザインや、特別なグラデーションペイントが施され、世界限定100台(日本限定17台)というレアモデルとなっています。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
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