原始的だけど理に適っているクルマのドアの仕組み
■ドアを強く閉めないと半ドアになるのはなぜ?
ドアのロック機構が「半ドア」状態を作り出すというのはわかりましたが、クルマのドアはなぜ軽い力で完全に閉まらないのでしょうか?
それは、クルマのドアには、外からの雨や風をシャットダウンするためのゴム製のパッキンがあるからです。
そのパッキンは「ウェザーストリップ」と呼ばれ、硬貨くらいの断面積の中空構造をしています。この中空のふくらみをつぶすことでドアの面に密着して、雨や風の侵入を防いでくれています。
この「ウェザーストリップ」を密着させるためにつぶす力を加える必要があるので、クルマのドアは勢いを付けて閉めないとならないという構造上の理由なのです。
ちなみに、欧州車、とくに「アウディ」や「BMW」などのドイツ車に多いと思いますが、ドアを開けるとウインドウが自動で少し開いて、ドアが閉まるとウインドウも閉まるという動作がありますよね。あれも「半ドア」に関係があるともいえるのです。
それらの車両は、ドアもボディ剛性の一部との考えでしっかり作ってあり、そのせいで空気の逃げ場が少なく、気密性が高まっています。そのことでドアを開け閉めする際に内圧で押し返されて「半ドア」になりやすいことから、ウインドウを開いて内圧を逃がすようにしているようです。
また、この内圧を逃がすことは乗員への気圧の負担も軽減するという目的もあるようです。
このように、「半ドア」はドアの安全性と風雨の侵入を防ぐための構造的な問題が原因だということがわかりました。しかし、さすがに自動車がいまのプレスボディの構造になってからでも軽く100年以上経つというのに、まだ「半ドア」という原始的な現象から脱せないでいるのは、さすがになんとかしてほしいものですね……なんて考えてしまいますが、ようやくここ数年で、自動で「半ドア」を増し閉めしてくれる機構も実用化して普及しているようですので、完全にドアの開閉が自動化される日もそう遠くはないのかもしれませんね。