「M・M思想」と「アート」を標榜するホンダの新EV「0シリーズ」! 真逆の考えは融合できているのかデザインのプロがチェック!! (2/2ページ)

最近のホンダのシンプルなデザインが反映された2台

普遍的なカッコよさをいま再構築する

 では、具体的に「SALOON」からチェックしてみましょう。誰もがアッと驚くスタイリングはまさに「薄い」「軽い」をストレートにカタチにしたもので、いかにも「アート」と呼びたくなる佇まいです。

 ただ、超クサビ型のボディ自体は決して珍しい存在ではありません。たとえば、1970年代のマセラティ「ブーメラン」やランチアの「ストラトス ゼロ」など、ジウジアーロやベルトーネらによって、すでに50年以上前にこの基本形は提案されているのです。

 違いは徹底的に磨き込まれたサーフェスや、ハイテク感溢れる前後ランプなどの見せ方でしょうか。

 ここでも、この低いボディが特段「M・M思想」を強くアピールしていない点が面白いところ。実際にはキャビンフォワードのパッケージで広い空間を得ていると思えますが、たとえば乗降性も高いようには見えません。そうした普段の使い勝手と「M・M思想」の組み合わせをどう考えたのか? ここでも興味は尽きません。

居住空間ではなく社会性の追求を優先?

 もう1台の「SPACE-HUB」は、前後のランプ周辺が「SALOON」と共通性を持ちますが、その他は意外とフツーというか想定内のスタイルに思えます。ただし、美しいサーフェスのボディワークは近未来を感じさせる完成度で、見事です。

 ここも「M・M思想」で考えるなら、いっそのこと初代ステップワゴンくらい四角いほうがより広そうです。ただ、「HUB」という名前から想像すると、単に広さを求めるのではなく、コネクティブ性能を中心とした社会性こそがこのモデルの神髄なのかもしれません。

 じゃあ「薄い」「軽い」はどこにあるのか? といえば、それこそスリムなシートに代表されるミニマムなインテリアに反映されているようです。

 さて、こうしてあらためて0シリーズのスタイリングを見てみると、最近のシンプルなホンダデザインがより徹底されているようです。ただ、それでも「アートなんていっちゃって大丈夫?」という心配があるのも事実でしょう(笑)。

 つまり、まずはこの2台のスタイルが市販版でどこまで再現できるのか、その後に登場するであろうラインアップでも「アート」が表現できるのか? そこにシリーズの成否がかかっていると言えそうです。


すぎもと たかよし SUGIMOTO TAKAYOSHI

サラリーマン自動車ライター

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いすゞFFジェミニ4ドア・イルムシャー(1986年式)
趣味
オヤジバンド(ドラムやってます)/音楽鑑賞(ジャズ・フュージョンなど) /カフェ巡り/ドライブ
好きな有名人
筒井康隆 /三谷幸喜/永六輔/渡辺貞夫/矢野顕子/上原ひろみ

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