単なるデザインではない機能的に意味ある形状
さて、ジープに匹敵するクロカン四駆の国産ブランド、ランドクルーザーは、これから「意味あるカタチ」を伝統にしようとしている。
2021年夏にフルモデルチェンジしたランドクルーザー(300系)のエンジンフード中央には凹み形状があるが、これは単なる意匠ではない。トヨタいわく『衝突安全性能と前方視界の両立』のために設けられた凹みなのである。
しかも、これは現行ランドクルーザーが初採用した形状ではなかったりするのは、ご存じだろうか。じつは生産終了したランドクルーザープラド(150系)においても、2017年9月にマイナーチェンジした後期型から、エンジンフードの先端を凹ませることで『前方視界に配慮した形状』としている。
ランドクルーザー250では、ここまであからさまな凹みを設けているわけではないが、やはりエンジンフードの中央付近は低くなっているのが確認できる。サバイバル性が期待されるランドクルーザーだからこそ、少しでもリスクを減らすよう前方視界を確保するデザインとしていることに意味があるといえる。
ところで、国産車の歴史において、かなり誤解されていると感じるのはホンダのスーパーカーNSX(初代)のフォルムだ。
そのロングテールについては「ゴルフバッグを収められるトランクを設けるため」という話が都市伝説的に広まっているが、ロングテールは空力特性を考えての形状というのが公式見解だったりする。
それはホンダだけのアイディアというわけではない。1980年代の名レーシングカーとしてル・マン24時間耐久でも勝利したポルシェ956LHが知られているが、名前の最後につくLHは「Langheck(Long Tailの意)」の略称であり、高速での空力性能を高めるためにロングテールを採用したというのは有名な話だ。
なお、初代NSXの後期型においてはコブ状の固定式ヘッドライトに変わったことが一部のファンから不評だったりするが、あのヘッドライトカバー形状や、同時に変更されたフロントバンパー形状は、いずれも空力から導き出されたデザインであり、そこにも機能的な意味があったことは言うまでもない。