シートの縫製にまでおもてなしにこだわっているLBX
搭載エンジンはヤリスクロスと同じ3気筒ながら、回したときの騒々しさとは無縁。3気筒エンジンのネガとなる低い周波数のノイズを低減するため、エンジン振動を抑えるバランサーシャフトを追加し、吸排気音の低減を図るため、レクサスUX並みのマフラーサイズを奢るとともに、車体側でもフロア振動を抑える高減衰構造接着剤をフロアにふんだんに使っているこだわりようだ。
1.5リッター3気筒エンジンそのものとスペックはヤリスクロスと同じ(91馬力、12.2kg-m)であるが、がっかりすることはない。モーターはヤリスクロスの前80馬力/14.4kg-m、後5.3馬力/5.3kg-mから前94馬力/18.9kg-m、後6馬力/5.3kg-mに増強(4WD)。結果、HVのシステム出力は、ヤリスクロスHVの116馬力に対して、LBXは136馬力に高められているのである。
そんなレクサスの新星、LBXのCOOLグレードを走らせてみると、ヤリスクロスより15mm低くセットされたフロントシートは、本革仕立てにもかかわらず、じつにかけ心地がしっくりしているのに気づいた。本革シートは布シートと比べ、表皮の張りが強く、体重の軽い人だと(65kgの筆者も)、お尻の沈み込みが不足し、かけ心地、そして体重によるシートの沈み込み=サポートもまた不足してしまいがちなのである。ところがだ、LBXの本革シートは高級なレザーを使っているにもかかわらず、しっかりといいカンジにお尻が沈み込み、シートのサイドサポートに頼らずとも体がサポートされるのだ。
その感覚はカーブ、コーナーで顕著になり、人車一体感ある、安定感たっぷりの操縦感覚を味わせてくれるのである。そう、いま乗っているクルマが最低地上高200mmのクロスオーバーSUVであることなど信じられないぐらいに。
その秘密は、シート座面とサイドサポート部分の縫製の工夫によるものだという。一般的に座面とサイドサポートは合わせ目ギリギリのところでぴったりと縫い合わせられている。が、レクサスLBXは合わせ目の奥で縫い合わせる「深吊り工法」を採用。これによって、張りの硬い本革シートでも座面が体重によって伸びやすくなり、また面圧分散にも効果的で、シートのフィット感が大きく増すことになる。
繰り返すけれど、それもまたクロスオーバーSUVらしからぬ人車一体感ある走り、操縦性を可能にしたトリビア的ポイントなのである。ただし、そのシートの「深吊り工法」は、比較的体重の軽いユーザーの多い(?) 日本仕様のみの仕立てだという。
最後にパッケージについて説明すると、前後席のタンデムディスタンスは、ヤリスクロスに対して-4mm。つまり、後席のニースペースも-4mmとなるわけだが、これは後席乗員の膝の位置と、15mm低まった前席シートバック角度との位置関係が変わり、そうなるという理屈。もっとも、身長172cmの筆者のドライビングポジション基準での膝まわり空間は115mm前後とヤリスクロスとほぼ同じ、誤差の範囲といっていい。
また、ラゲッジスペースの奥行はヤリスクロスに対して40mmも狭まっている。ホイールベースが20mmも長いのに、これいかに? だが、理由はダイナミックなスタイリング実現のため、リヤオーバーハングをあえて短くしているからだ。とはいえ、機内持ち込みサイズのキャリーケースを縦に4つとソフトバッグふたつが積み込める容量を確保しているのだから、不足はないだろう。
ちなみに、レクサス自慢の静粛性に関しては、4WDが一枚上手に感じた。理由は低周波のロードノイズは、車重が重いほうがマス効果で伝わりにくいからである。
ただし、軽快でリニアリティある走りのよさでは、80kg軽いFFがリードする印象。レクサスの「カジュアルスニーカー」というコンセプトからすれは、FFがよりLBXらしいかも知れない……。