【試乗】素直にカッコイイ! 走りは上質! 燃費もスゴイ! クラウン・スポーツPHEVに死角らしい死角が見当たらない (2/2ページ)

動力性能もデザインも文句なし!

 システムを起動し、シフトレバーをDレンジにセットすれば走り始めることができる。

 エネルギーフローモニターを表示させて駆動力の配分を確かめてみると、まず走り始めは4輪全輪で駆動力をかけ始め、車速が上がってくると、ほぼFF前輪2輪駆動状態となっているようだ。

 基本的な駆動力配分は前55、後45がベースとなっていて、 モードや走行シーンによっては前20、後80の駆動力配分にまで変化を与えることができる。

 ドライブモードは、ノーマル、エコ、スポーツ、カスタムとあり、それらはアクセルのトルクピックアップレスポンスやバッテリー出力制御コントロールなど、パワートレインを中心に回生力も含めて制御しているものである。

 一方、シフターの手前方向にはドライブモード選択スイッチが配置されている。左側はプッシュボタン式のハイブリッドモードとEVモードの切り替えを行なうものとなっており、また右側のスイッチは、チャージモードとしてエンジンを稼働させ、バッテリーに充電しながら走行することが可能となるものだ。

 走り始めてすぐに気がつくのは、 非常に静かで乗り心地がいいことだ。一般道の試乗ゆえ、路面のアンジュレーションやつなぎ目、段差などもところどころにあるが、そうしたところの通過時において、非常にしなやかに振動が減衰され、不快感を感じさせない。

 スポーツモードにすると、今回このPHEVから採用されたAVSがショックアブソーバの減衰力を高め、少し硬い印象となるが、ノーマルやエコモードでは非常に滑らかな乗り心地を提供してくれているのである。

 このAVSは、クラウンスポーツHEVには搭載されておらず、今回のPHEVに初めて搭載されたもので、 走り始めてすぐにその効果の高さを感じ取ることができた。

 21インチの大径ホイールに235サイズの幅広タイヤを装着。ミシュランeプライマシーという電動車向けのタイヤと組み合わされている。剛性の高いタイヤなので、一見乗り心地的には厳しいものがあるのではないないかと思わせたが、実際に走らせてみるとすこぶる快適でスムースな足まわりに驚かされた。

 また、ブレーキには6ポットの対向ピストン式大型キャリパーをフロントブレーキに採用し、ブレーキディスクはフローティングハブ方式となっていて耐フェード性が極めて高いことが見て取れるだけでなく、ブレーキペダルフィールも剛性感がありスポーツ性の高さを感じさせてくれる。

 リヤブレーキは一般的な片押しのブレーキシステムだが、 キャリパー部分を赤く塗装することによってフロントブレーキとコンビネーション化されており、見た目をスポーティに演出しているようだ。

 動力性能的には、フロントモーターが182馬力で270Nmのトルクを発生し、リヤモーターは54馬力かつ121Nmの最大トルクを発し、システム出力としては306馬力を発生するとのこと。

 今回の試乗ではアクセル全開加速を試すような場所はなかったので、どれ程の加速力が動力性能の実力として示されるかは確かめられなかったが、2030kgの車両重量に対しても、数値的には相応な速さを持っているといって構わないだろう。

 また、ハンドリングに関しても、クラウンスポーツのHEVは1820kgであったのに対し、PHEVは210kgほど重くなっているが、 それを感じさせない軽快な仕上がりを見せていた。

 バッテリー電力が大きいのでモーターを積極的に稼働させることができ、また大きなトルクを発することも可能となっていて、それが小気味よい加速感を支えてくれているといえる。

 コーナーに進入すると、ステアリング操作に対して非常にリニアな特性で旋回を始める。

 車体のロールはAVSによって抑え込まれ、フラットな乗り味でありながら正確なライントレース性を持たされている。また、その際のステアフィールもしっかりとした手応えが感じられ、高精度で安心感に溢れる乗り味となっているのである。そのステアリングには、システムにはデュアルピニオンのパワーステアリングが装備されていて、これが路面からの入力、ホイールへの外乱をうまく抑え込み、ネガティブな部分を打ち消している。

 さらに、DRSの後輪操舵システムを備え、最小回転半径5.4mを実現している。後輪切れ角は最大4度となり、取りまわし性も優れていた。Uターンや車庫入れなどの実用性に優れ、 利便性を高めているといえるだろう。

 DRSは時速80キロ以上で同相へ変化し、また低速では逆走に変化するなど、クルマの操縦性には欠かせない装備として世界中の多くのクルマに採用され始めている。クラウンスポーツもそうしたトレンドに遅れることなく採用していることは、グローバル化を狙った戦略とうまくマッチして評価を高めていくことだろう。

 市街地中心に走らせた結果、電費は約4km/kWh程度。ハイブリッドモードを使用すると、燃費は19.7km/Lで カタログ燃費に近い数値を引き出すことができた。2トンを超える重量で21インチの幅広タイヤを装着したスポーツモデルが、こうした優れた燃費で走れることは、少し前であれば信じられない。

 後席にも乗ってみたが、リヤシートバックは残念ながらリクライニングしないけれども、シートヒーターのスイッチを発見。 また、USBタイプCの電源コンセントやエアコンの吹き出し口などもあって、後席ユーティリティも高まっているのは嬉しいことだ。ただ、足もとのスペースはショートホイールベースであることもあって決して広いサイズとはいえないが、大人が乗車するにも十分なスペースとなっている。

 リヤのラゲッジコンパートメンメントは、奥行きはあるものの、ボディ形状から高さはあまりない。一般的なスーツケースがふたつぐらいは入りそうだけれども、より多くの荷物を積みたいということならば、 これから登場するエステートのデビューを待つほうがよさそうではある。

 個人的には、このクラウンスポーツの車体外観デザインとフォルムは文句のつけようがないほどに素晴らしく、格好がいいと感じている。それに加えて、優れた燃費と動力性能、走り、また急速充電機能やVtoH(ヴィークルtoホーム)など多機能で、時代にマッチしたクラウンとして大いに歓迎されるダロウ。ボディカラーもまたトレンドにうまく合わせた色調が与えられていて、 どのカラーも似合っている。

 クラウンスポーツPHEVは、おそらく今後ヨーロッパ市場などにも導入され、世界中から高い評価を受けることになると思う。価格は約770万円と高額だが、たとえば東京都であれば、国の補助金や東京都独自の補助金などを合算すると70万円程度の補助金を受けることができる(補助金の期限が終了してしまったものもあるが)。

 また、電気料金は自宅で充電する場合200Vの普通充電機能も備えているので、1kWhあたり30円として計算すれば、18.1kwで543円ほど。それで約90kmも走れるのであれば、ガソリン代に換算すればはるかに経済的だといえるだろう。

 いま、BEVか、ハイブリッドか、あるいはPHEVかと世界中が大きなうねりのなかでさまよい続けているが、PHEVは非常に実績のあるしっかりとした基礎技術を確立しているといえるだろう。 クラウンスポーツPHEV、機会があれば 雪道やちょっとしたサーキット走行なども試してみたいと思わせられた。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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