東日本大震災での経験からVtoHを開発
こうした動きの発端は、2011年3月11日に発生した東日本大震災だ。当時、すでに三菱i-MiEVと日産リーフは発売されており、ガソリンスタンドへのタンクローリーによる燃料補充が道路の寸断で進まないなか、より早く復旧した電気を使い、物資の運搬などにEVが活躍した。
しかし、当時はまだEVから外部へ電力を供給する仕組みがなかった。そこで被災者やそれを支援する人たちから、「せっかく大容量のバッテリーを車載するのだから、EVから電気が手に入ればうれしい」との声が上がり、以後、日産と三菱は、移動可能な電源としてのEVの可能性を探り、開発に乗り出したのだ。
ひとつは、日産がニチコンと共同開発したVtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)だ。三菱自が開発したのは、MiEVパワーボックスで、これはEVから家庭電化製品への電力供給設備である。
これをきっかけにニチコンではVtoHにとどまらず、さまざまな電気製品への電力供給をEVから可能にするパワームーバーを商品化した。
2016年の熊本地震では、三菱アウトランダーのPHEVから、外部電源を通じて家へ配線を引き込むことで電化製品を使えたという事例もあった。ことにEVは、大容量のバッテリーを車載するので、災害時を含めた外部への電力供給に一役買える優れた可能性を持つ。
しかしながら、ヒョンデやBYD、メルセデス・ベンツ、テスラ・サイバートラック以外の輸入EVは、車載バッテリーから電力を取り出す機能が設けられていない。気候変動による災害は世界規模であり、スマートフォンなど通信端末を使っての情報収集や救助などの期待が高まっているなか、EVの普及が電源確保に役立つことが世界標準になるといいと思う。