メルセデスAMGを名乗った初のシリーズモデル現る
1993年1月1日、ダイムラー・クライスラーはAMGの株式の51%を取得し、AMGは正式に現在のメルセデスAMG社となった。そして、その共同プロジェクトの第一作となったのが、190シリーズの後継車として同年のフランクフルトショーで誕生したW202シリーズ、すなわち初代Cクラスにデビュー時からシリーズモデルとして設定されていた、C36AMGにほかならなかったのである。
すでにモータースポーツにおいては、両社の良好な関係は広く知られてはいたものの、メルセデス・ベンツのカタログにAMGの名前が記載された意味は大きかった。以後、AMGモデルは30年以上にわたって、各クラスのトップモデルとしての役を担っていくのだ。
その原点ともいえるC36AMGは、W202型CクラスのC280をベースに開発されたモデルだ。日本市場には同時にAMG C280と呼ばれる、C280スポーツラインをベースとして、それにAMG製エアロパーツや17インチ径のアルミホイール、ショックアブソーバーなどの特別装備を加えたモデルも輸入されているが、C36AMGとの大きな違いは搭載されるエンジンにあった。
C36AMGには排気量を3.6リッターに拡大した直列6気筒DOHC24バルブ(M104 E36型)が採用されていたのである。最高出力は280馬力、最大トルクは384Nm。クランクシャフトを3.5リッターディーゼルエンジンのそれから新たに削り出して再調整したほか、インテーククロスパイプやエキゾーストシステム、改良型のモトロニック等々のチューニングによって、この魅力的なスペックは得られている。
シャシーもこのパワーに対応して十分な備えだ。サスペンションの取り付け位置はノーマルから変更され、それによって重心を低下、ビルシュタイン製の専用ダンパーによってコーナリング時の安定性向上を実現した。デザインはフロントがダブルウイッシュボーン、リヤがマルチリンクとなる。
ブレーキはフロントにSクラス用の4ポットキャリパーを改良して採用。リヤにも2ポットキャリパーを備えるなど、こちらも走りの性能をはるかに上まわるスペックのシステムが組み込まれている。
ホワイトボディの段階からスポット溶接増しによって、さらなる剛性の高さを得ているというC36AMG。それは現在でも輝きを失わないメルセデスAMGの秀作なのだ。