エンジン車は高速で燃費がよくなりEVは電費が悪化! 真逆の性能となる理由は「モーターとエンジンの特性の違い」ではなかった (2/2ページ)

EVの高速走行はガソリン車で3速固定で高速を走るようなもの

 こうした前提によりあらためてWLTC測定における各モードを見ると、サクラは市街地モードがもっとも電費が伸びているが、デイズの市街地モードはもっとも燃費が悪く、デイズの郊外モードと高速道路モードは似たような数値で燃費に優れていることがわかる。そしてサクラの高速道路モードは、目に見えて電費が悪い。

 この理由は、変速機構の有無に由来する違いと理解するのが妥当だろう。

 デイズの場合は、CVT(変速比2.411~0.404の無段変速)と6.540の最終減速比という変速機構を持っている。このふたつをかけあわせたオーバーオールレシオは15.768~2.642となる。ご存じのとおり、同じ速度であれば変速比が大きいほど加速力が強くなり、変速比が小さいほどエンジン回転数を低めることができる。

 一方、サクラの場合は多段変速機構を持っておらず、最終減速比は8.153となっているのみだ。つまり、市街地から高速道路まで固定ギヤで走っているという構造になっている。これは、モーターの守備範囲が広いからできることなのだが、オーバーオールレシオ8.153というのをエンジン車に当てはめると3速固定で走っているようなものだ。

 エンジン車の高速燃費が優れているのは、高速巡行時にはハイギヤード(変速比が小さい状態)とすることでエンジン回転を低くしていることによるというのは感覚的にも理解できるだろう。エンジン車の高速巡行燃費が優れているという経験則は、エンジンの特性というよりは多段・無段変速機構を持っていることに起因している。

 エンジン車であっても、3速固定で高速道路を走行したらさほど燃費が良くならないのは自明だ。EVの高速電費が悪い傾向にあるのは、現時点で量産されているEVの多くが固定変速比となっていることが理由といえる。

 なお、2~3段の変速機構をEVに採用するというアプローチは、プレミアム&パフォーマンス系EVでは始まっているし、多段変速機を組み合わせることでモーターを小型化(ローコスト化)するという開発も進んでいる。将来的には、EVの高速巡行電費は改善することが予想される。現時点での傾向から、「EVは高速走行をすると航続距離が短くなる」という固定観念を持ってしまうのも考えものかもしれない。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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