事態は「自動運転がカギ握る」といえるほど単純じゃない
運転士を必要としない自動運転は、現在では「自律走行型」とも呼べるバス自体が自動で運転するものが一般的に「自動運転」と呼ばれている。バスやタクシー、トラックを操る運転士を必要としないので、二種免許を持つ運転士の数に関係なく自動運転車両さえ導入すれば運行することが可能になるともいえるが(まったく無人というわけではなく緊急時対応のスタッフは同乗するようだ)、専用装備を施した車両のほかそれをオペレーションするシステムや、導入路線における環境整備など、初期導入コストは莫大なものとなる。
トラックやバス、タクシー事業者のほとんどの経営状況はすでに青色吐息状態。そんな各事業者がおいそれと自動運転車両を導入してオペレーションするための資金を用意することはかなり難しいとされている。「自動運転に積極的に取り組むよりは、そのまま廃業の道を選ぶ事業者が目立ってくるかもしれません」とは事情通。
仮にそれほど障害なく導入できたとしても、利用者側の心理的なものが問題になるかもしれない。「自動運転するクルマには乗れない」という人が出てくることも想定しなければならない。つまり、導入当初は何か起きたときのために運転補助的な人員は乗車するだろうが、自動運転車両と従来どおり運転士が運転する車両が混在することも十分予測できる。とくにタクシーでは、電話やアプリで配車要請する際には、自動運転車両(有人)と、運転士が運転する車両が選べるようにしなければならなくなるかもしれない。
「ヒューマノイド」ともよばれる、いわゆる「ヒト型ロボット」が運転士に代わって車両を運転し、それを「自動運転」として働き手不足を解消するという研究も進んでいるが、こちらもまだまだ現実的な解決策と言い切れるまでにはなっていない。
困難ではあるものの、高校や大学を卒業した「学卒採用」運転士や、二種運転免許を持ちながら自動車運送業に従事していない人を積極雇用するなど、働き手を増やしていくしか当面の対策はないのが実状ともいえる。
「自動運転がカギを握る」といった発言は、短期間では逃げ口上にしか見えないし、抜本的解決にはならないと筆者は考える。
働き手不足だけではなく、2024年問題で減便や路線廃止、タクシーの稼働台数の減少傾向には拍車がかかっているようにも見える。技術進歩を神頼みのように待つだけでは事態は深刻化していくだけとなるだろう。