SUVが歓迎されているエリアと歓迎されてないエリアにわかれる 以上の数値や主張はパリ市のリリースに引用されているところで、3年前にWWF(世界自然保護基金)フランス支部が発表したリポート内容と符合する。ゆえにパリ市当局がもっとも優先課題として挙げているのは、公共スペースのよりよい共有のされ方だ。環境やCO2への配慮は背景に無論あるが、奥に押しやられているというより、今回の選挙の意義として入口と出口が逆になっている、そんな雰囲気だ。
つまり、歩行者や自転車といった交通弱者の安全を掲げながら、環境への配慮がやはり本丸というところを有権者が嗅ぎ取ったのか、投票率自体が低いなりに、地区ごとの投票結果はSUVと環境の相容れない関係を示していて、言っては何だがわかりやすい。
交通弱者が往来しているパリ市内の様子 画像はこちら
もっとも賛否の偏りが見られたのは、富裕層が多く住むことで知られる16区で、じつに有効票の81.95%がSUV駐車料金の3倍化に反対を投じた。半径1kmぐらいに限って住民は住居区料金が認められ、その場合はSUVでも3倍料金の対象外なのだが、アンチSUVに賛成したのはたった18.05%に過ぎない。
次いで反対派が多かったのは、エッフェル塔まわりで芸能人や政治家、高級官僚が多く住む7区で、反対74.05% vs賛成25.95%。さらにモンテーニュ通りなどのブランド通りで知られる8区が、反対73.05% vs賛成26.95%で続いた。
エッフェル塔 画像はこちら
逆にSUV制限に賛成派が圧倒的多数という傾向が、右岸の周辺区に広く見られた。周辺区というのはパリの行政区配置はルーブル宮殿辺りが起点の1区で、時計まわり渦巻貝のように2、3、4の各区、セーヌ川を渡って5、6、7区……といった具合で、10区辺りから上の区は観光名所的なパリからやや遠ざかっていく。
76.79% vs 23.21%と賛成>反対のコントラストがもっとも強く出たのは、北駅・東駅まわりの下町を抱える10区。次いで20区が73.57% vs 26.43%、19区が73.12% vs 26.88%、そして18区の71.99% vs 28.01%に、11区がほぼ同率の71.54% vs 28.46%となった。慢性的に渋滞と駐車場難の地区ばかりだ。
ちなみにパリ右岸でも左岸でも賛否の比率は東西で逆転し、50:50近くで決着した区はいずれ皆無だった。投票という形で声を上げた人は少なかったとはいえ、それだけ「街SUV」が人々の嗜好あるいは嫉妬の対象であり、好悪を激しく割る問題ということでもある。
後部の窓ガラスにテスラ批判を印字している旧車 画像はこちら
それが選挙結果として数値として出てしまうと、まるで民意として政治的材料として扱われてしまう。そういうあえて利かせたようなレバレッジで政策が決められてしまう現象を、気にかけるべきなのだろう。