この記事をまとめると
■フランスのパリ市ではSUVの駐車料金を3倍にすることが市民投票で決定した
■SUVは環境負荷が大きく死亡事故率が高いため、駐車料金値上げが可決された
■エリアごとに反対派多数と賛成派多数が顕著にわかれていた
SUVの駐車料金が3倍に!?
すでに広く報じられているとおり、パリ市は、SUVの駐車料金が3倍になることに賛否を問う市民投票を2月4日に実行し、賛成が上まわった。昨年の、乗り捨て形式の電動キックボードサービスの廃止に続き、アンチSUVが選挙で上まわる結果となった。
ただし、留意すべきは選挙結果とあわせて、データの示すところ。投票資格のある有権者数は137万4532人だったが、222カ所に設けられた投票所を実際に訪れ、投票行動を起こしたのはたったの7万8121人に過ぎない。じつに有権者の6%にも満たない。そうした少ない分母の内、54.55%にあたる4万2415人が賛成票を投じ、反対票は45.55%の3万5340人、無効票は366人だった。
つまり、賛成は有権者全体の3%少々、反対は2.5%強に過ぎない。いわゆる国民投票と違って、自治体が市民の意を問うために催した法的拘束力もない選挙とはいえ、アンヌ・イダルゴ市長は、9月1日からSUVの駐車料金の3倍化を実行に移すという。
選挙のお題は、「重く、嵩張り、汚染度の高い個人車両の駐車料金に、特別料金を設定することに賛成か反対か」で、対象となるのは1.6トン以上のICEからHVにPHEV、2トン以上のBEVなので、ハイエンドのドイツ車は相当な割合で、プジョー508の一部やテスラ・モデル3などのセダンも含まれるはずだが、パリ市は選挙を呼びかけるポスターでも明らかに「SUV」を標的にしていた。
SUVが問題視される理由はどこにあるか? ここ10数年来、環境保護やCO2排出関連の政策で、パリで自動車はすでに制限すべき対象となっていた。その間、SUVや4×4の普及によって自動車の平均サイズは増す一方で、1990年の975kgから今日の1233kgへ、ここ30年間で車重の平均値は250kg以上も増え、とりわけSUVは標準的なクルマよりも200kg以上も重く、全長は+25cm以上、全幅は+10cm以上あるという。
また、SUVの絡んだ人身事故は、子どもでも大人でも年配者でも歩行者側の死亡率が通常車の2倍以上にものぼると指摘しており、SUVのドライバーが路上で事故に遭う確率も、通常車より10%高いとか。