この記事をまとめると
■1980〜2000年代のちょっと旧い輸入車では内装の劣化が起こりやすい
■内装のべたつきや天井の垂れ下がり、内張りの浮き・剥がれなどの原因と対処法を解説
■DIYで対策できるものもあるが、内装の専門業者にリペア依頼をするのが確実だ
ちょっと旧い輸入車では定番の溶ける内装
車検のときに貸してくれた代車に乗って帰宅する途中、エアコン吹き出し口の向きを変えようとインパネの化粧パネルに触れたとき、「べた〜」という感触がして慌てて引っ込めた手の指先を見ると、その化粧パネルと同じ色の何かが付着していた……、なんていう経験、ありませんか?
これは内装の表面の劣化によってべた付きが始まっていることが原因です。その化粧パネルは全面がべた付いており、上の面にはホコリが付着してしまい、なんだかみすぼらしい印象の状態となってしまっていることが多いと思います。
この症状、ちょっと旧い欧州車によく見られるようで、情報を集めてみるとBMWの例が多く見つかりました。
ここでは、旧い欧州車に多く見られるというそのべた付きや、内装の浮き、剥がれがどうして起こるのか、そしてそのべた付きや浮き、剥がれをどうにかできないかということについて話していこうと思います。
■内装のべた付きはなぜ起こるのか?
まず、この内装のダメージについてですが、前述のように欧州生産の中古車に多く見られるという報告例をよく目にします。それも、1980年代の半ば頃から2000年にかけて生産された車両で起こりやすいようです。
まずは、内装の樹脂部分の表面がべた付いてくるのは何が原因かという点についてです。集めた情報によると、この頃の欧州車の内装パーツの表面には、感触や見た目の質感をソフトに仕上げるためのコーティングが施されているケースが多いようで、その表面のコーティングが悪さをしているというのが、べた付きの要因のようです。
ふつう、樹脂のパーツは劣化すると表面のツヤがなくなり、冬場のカサカサの肌のように細かくひび割れたり、白茶けたりすることが多いようです。その場合はべた付くのではなく、むしろ粉を吹いて触った指先に白い粉末状の劣化した樹脂が付着するでしょう。
それに対して、べた付くというのはゴム系の材質に多い特徴でなので、おそらくは表面をソフトに仕上げるにあたって、ゴム系のコーティングが使われたのではないかと推測できます。
輪ゴムが劣化して樹脂のケースと一体化しているのを見たことがある人もいるでしょう。ゴムは一部の樹脂との相性が悪く、相手を溶かしてしまう特性があるので、組み合わせ次第では表面のゴムの劣化によって内側の樹脂が浸食されているケースも考えられます。
■べた付きの除去は可能か?
ゴム系の材質の劣化を「加水分解」と言います。加水分解とはその字のとおり、水分によって物質の分子結合が絶たれる=分解する現象のことです。古いスニーカーのソールが剥がれてくるのはこの加水分解が原因で、汗に含まれる水分や皮脂がゴムの成分に干渉して分解反応を引き起こすようです。
さて、この加水分解、表面がべた付いてしまうとその場所に触れるのが嫌になってしまうのでどうにかしたいですよね。
べた付きの対処の方法としてもっとも有効とされているのが「エタノール」です。エタノールは正式には「エチルアルコール」といい、アルコールの一種です。エタノールは昔から医療用の消毒液として使用されてきました。コロナ禍のときに手指の消毒薬として大いに活躍したので、それで知ったという人も多いでしょう。そのエタノールが、内装のべた付きに効果があるんです。
工業の分野では、純度の高い「無水エタノール」が、ゴム系の材質の除去用として使用されているという背景があるので、それを内装にも活用してやろうということです。
ひとくちにゴムっぽい表面でも材質はいろいろありますので、すべてに有効というわけではないようですが、内装のべた付きが驚くほどカンタンに除去できたという報告例が多く見られますので、効果は確かかと思われます。
作業の際にはウエスをたくさん用意して、できるだけキレイな面を使ってエタノールに浸してこするようにするとキレイに除去できるようです。
軽いべた付きなら消毒用エタノールでも効果があるようですが、劣化が激しいケースは無水エタノールを使用しましょう。
樹脂の素材むき出しというのが気になる場合は、内装用の塗料などでコーティングするという手もありますが、それもまた劣化する可能性があるので、実行するかどうかは自己責任で。
また、内装専門の業者に依頼すると、数万円で塗装までやってもらえるという情報もありました。