この記事をまとめると
■かつて有鉛ガソリンと呼ばれるガソリンがあった
■いまのハイオクにあたるオクタン価を高める「四アルキル鉛」が含まれていた
■「四アルキル鉛」は人体に有毒な物質のため現在は基本的には使用されない
高圧縮な高性能エンジンにはオクタン価の高いガソリンが必要
「ゆうえん」と言う言葉を聞いたことがあるという人は、このWEB CARトップの読者のなかにどれほどいるでしょうか? 普通に変換すると「遊園」が出てくるかもしれませんが、ここで取り上げる「ゆうえん」は「有鉛」です。
いま50代の人でギリギリ、クルマのリヤウインドウの隅に貼られた「無鉛」と書かれたステッカーを目にしたことがあると思いますが、「有鉛」という単語に馴染みがあるのは70歳以上の人でしょう。つまりこの「有鉛」が常用されていたのは、いまから60年以上前の1970年よりも前の話なんです。おそらく30代の人は「ポカーン」でしょうね。
■「有鉛」とは「有鉛ガソリン」の略語
いまから遡ること軽く60年以上前、1970年頃より以前のガソリンにも、いまと同じ「レギュラー」と「ハイオク」の区分けがありました。正確には「ハイオク」とは呼ばれておらず、同じ意味ですが「高オクタン価ガソリン」という呼称でした。
オクタン価というのは、ガソリンが燃焼するときにノッキングの起こしにくさを示す基準です。ノッキングというのは、スパークプラグで着火する前に、部分圧縮や排熱しきれなかったことによる局所的な高温部分を火種に自己着火してしまう現象のことです。いってみれば「フライング着火」ですね。ちなみにディーゼルエンジンは、着火をスパークプラグに依らずに高い圧縮による自己着火で行う方式のエンジンです。
このノッキングという現象は、エンジンの出力を高めて行くにつれて発生しやすくなるという傾向があります。高出力にするためには圧縮比を高める必要があり、その結果として発生するエネルギーが大きくなるので燃焼温度が上がります。高い燃焼温度で稼働させると、熱を逃がせずに高温が残る部分が発生しやすく、圧縮も高いために、その熱が残った部分からノッキングが起こってしまうのです。
ノッキングを押さえる方法は、吸入温度を下げたり点火時期を調整したりといくつかありますが、燃料自体に異常燃焼をしづらい特性を持たせることで、根本的にノッキングの発生を抑えることができるため、その結果としてパワーが上げられます。つまり、高出力を狙った設計のエンジンには、高オクタン価のガソリンは必須なのです。