お金があったらこんなのでドライブしてみたい!
フィアット500スピアジーナ・ボアノ
屋根とドアを切り払ったビーチカーのスタイルをしているものの、佇まいにはただならぬ雰囲気がほのかに漂う1台。それもそのはず、こちらは元フィアット総帥にして希代の洒落者として知られるジャンニ・アニエリがオーダーしたスペシャルモデルなのです。
1958年、ギアのスタイリストだったマリオ・ボアノが手がけたとされ、チンクエチェントをベースとしながら、ビーチカーのセオリーを踏襲。それでいて、何物にも似ていないスタイルを作り上げたのは、アニエリの慧眼、センスの賜物といえるでしょう。
たとえば、前後のバンパーとウエストラインにウッドを使い、加えてフロントシートの背部にも同じニュアンスのウッド張りというディテールは、ビーチカーの最高峰と呼んでも差支えないでしょう。
また、リヤはビロード張りのソファかのように仕立てているのも他車とは一線を画したもの。さらに、テールフィンを模したリヤエンドや、フードのルーバーなどクルマとしてのスタイリングにも手抜かりなし!
ボアノはアニエリ用の1台に加え、海運業で財を成したアリストテレス・オナシス向けの合計2台のみを作り、いずれも現存しているとのこと。ちなみに、アニエリは1973年に専属ドライバーだったベルナディーノ・アイアッサにプレゼントしたという太っ腹。
巡りめぐってオークションに出品されていますが、指し値は27万~29万ユーロ(約4300万~4600万円)と、にわかには信じがたいものとなっています。
BMC ビーチミニ
ビーチカーは1950~60年代のヨーロッパで流行したものですが、ドアなしのカジュアルな乗りものがウケたのはアメリカも同様でした。有名なのはメイヤー・マンクス、いわゆるサンドバギーと呼ばれるタイプですが、それより少し前の1962年に上陸したのが、こちらのビーチミニ。BMCがプロモーション用に15台のみを製作し、北米のディーラーに配ったとされています。
ドアを省き、籐のようなシート表皮、よりカジュアルな内装まではビーチカーのセオリーどおりですが、BMCは「屋根がないとミニに見えない」とルーフだけは残しています。
さすがに当時ものはオークション出ると2000万円という高値が記録されているのですが、こちらはドイツのメンガース社が作ったリプロダクション。オリジンの848ccに対し、ドイツ製は1リッターエンジンに換装され、34馬力から42馬力にパワーアップもされています。同社ではさまざまなオプションを用意しており、なかにはハイブリッド仕様を選ぶことも可能だとか。
日本では法規上なかなか難しそうですが、こんなミニで海辺を走ったら爽快このうえないはず。この際ですから、モークも似たり寄ったり、という意見は聞こえなかったふりをしておきましょう。