電動化時代でも「6種類」が選び放題! 日本はクルマのパワーユニット天国だった (2/2ページ)

日本車は6タイプのパワートレインを選ぶことができる

 次にEV。正確には、外部から充電して電気のみで走行するバッテリーEV(BEV)のことです。軽自動車から高級セダンまでさまざまなタイプが揃ってきましたが、静かでなめらかな走りが特徴。走行中にCO2を排出しないことも、ガソリン車やハイブリッド車と違うところです。

 ただ、1回の充電で走行できる距離がガソリン車やハイブリッド車に比べると短いことと、充電するために最低でも30分程度は時間を要すること、充電スポットがまだ十分に整っていないことなどがデメリットとして挙げられます。車両価格も割高な車種が多く、補助金があるとはいえなかなか手が届きにくいのが現状でしょう。自宅に充電器が設置でき、1日の走行距離が短い人ならば、EVとの相性は良好。太陽光発電などを利用していて、蓄電池代わりにEVを使うという賢いエネルギーマネジメントも可能となっています。

 次に、水素を充填して発電することで走るFCV(燃料電池車)。これは現時点では乗用車というとトヨタ・ミライやクラウン、ヒョンデ・ネッソと少ないですが、以前はホンダにもクラリティFCVがあったり、販売していなくても研究開発を進めているメーカーは多いです。バスではトヨタのSORAが走っており、トラックも走行実証が進められています。

 メリットは、電気自動車は電気を外部から充電しなければなりませんが、FCVは自分で水素と酸素の化学反応によって発電できる、いわば動く発電所のようなもの。水しか排出しないため、走行中にCO2を排出しないという点ではEVも同じですが、日本のように自然エネルギーによる発電比率の少ない国では、EVよりもFCVのほうがトータルでみたときのCO2排出量が少なくて済むというメリットがあります。

 ただ、水素は一般人が扱いにくいエネルギーのため、水素ステーションにて専門のスタッフによる充填をすることになりますが、ステーションの建設費が高く、まだまだ数も少ない状況です。充填にかかる時間そのものは昔に比べると随分と短くなりましたが、そもそもステーションの営業時間が短いなど、EVよりさらに利用が難しいところや、車両価格が割高なところもデメリットといえるでしょう。

 最後にもうひとつ、あまり乗用車としては普及していませんが、タクシーやバンではFCVより多くの車種があるLPG(LPガス)車があります。メーカーがライン生産している車種としては、トヨタのJPNタクシー、ダイナ、日野自動車のデュトロ。改造事業者が扱っている車種としては、プリウスやカローラフィールダー、ノートやミニキャブトラックなどがありますが、こちらはLPGとガソリンを併用する車種がほとんどです。

 メリットとしては、排出ガスがガソリン車に比べてクリーンであること、EVと比べて航続距離が長いこと、リッターあたりの販売価格がガソリンより安価であること。とくに航続距離においては、アクセラセダンのLPG車が80リットルで1207kmを無補給で走行したという記録があります。LPGとガソリンを併用するタイプなら、軽自動車のミニキャブでも900km以上の走行が可能となっています。

 デメリットとしては、LPGスタンドの少なさでしょう。2003年ごろには1800か所あったLPGスタンドは減少を続け、2021年現在では約1400か所に。今後は水素と炭素の人工合成によるプロパネーションのLPGや、自然由来のバイオLPGの開発が鍵となりそうです。

 ということで、大きく分けても6タイプものパワートレインが混在している日本は、自分のライフスタイルや目的に合わせて多彩な選択肢が用意されている点で、とても面白い国だといえますね。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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