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タイヤ製造で「天然ゴム」に再脚光! なぜ合成ゴムから天然ゴムに先祖返りしつつあるのか?

タイヤ製造で「天然ゴム」に再脚光! なぜ合成ゴムから天然ゴムに先祖返りしつつあるのか?

この記事をまとめると

■タイヤの成分は化学合成ゴムが主流となっていたが近年は再び天然ゴムも使用されるようになった

■グリップや耐摩耗性に加えて環境性能も重視されるようになり、天然ゴムも併用される

■脱石油や脱炭素を目指すうえで原材料を見直すことは21世紀のものづくりに不可欠となっている

現代のタイヤには相反するさまざまな性能が求められる

 外観からは単なるゴムの塊のタイヤだが、ゴムのほかにも化学合成繊維や鋼線など、複数の材料で作られている。なかでもゴムは、石油から作られる化学合成ゴムが主流であったが、近年ではゴムの木から採れる天然ゴムの利用が行われている。

 時代を遡れば、英国人のダンロップが世界初の空気入りタイヤを自転車に使い、その後、フランス人のミシュランが自動車用に空気入りタイヤを使った時代は、ゴムといえば天然ゴムを指した。

 ただし、天然ゴムをそのまま使うと、気温の変化など熱の影響で柔らかさや持ちが変わるので、より安定的に性能を維持できるようにしたのが、米国人のグッドイヤーだ。ゴムに硫黄を混ぜ、加熱する加硫(かりゅう)という手法で、温度変化に強く、より長持ちするタイヤがつくられるようになった。

 さらに、エンジンの改良や、シャシー性能の向上などによってクルマの速度が高くなっていくと、よりグリップの高いタイヤが求められるようになる。柔らかいコンパウンドを使えばグリップは上がるが、一方で柔らかいゴムによりすぐ摩耗してしまっては、頻繁にタイヤ交換しなければならなくなる。そこで、ゴムの性能を飛躍的に高めるため、石油から作られる化学合成ゴムにより、グリップと耐摩耗性という相反する性能を両立することが永く行われて来た。

 その後、20年ほど前から、グリップと耐摩耗性に加え、燃費向上も強く求められるようになった。脱二酸化炭素の取り組みだ。グリップとは、いわばゴムと路面の間の摩擦抵抗によって高められるもので、かたや燃費は、転がりをよくすることであるため、摩擦抵抗は少ないほうがいい。ここでもまた、相反する性能を両立させる要求が生じた。

 燃費向上のため天然素材のシリカをゴムに混ぜることも行われるが、同時にまた、天然ゴムは化学合成ゴムに比べ転がり抵抗を減らす効果があるので、併用することが行われるようになった。

 さらに、たとえばダンロップは、天然ゴムを改質することによって合成ゴムと同様の性能を持たせ、100%天然ゴムで作ったタイヤを発売した。一般的なタイヤで約60%を占める石油由来の材料をゼロにする取り組みだ。

 クルマの脱二酸化炭素は、燃料だけでなく、製品においても脱石油を進められる。また、ゴムの木を育てるなど森林の保護は、植物の成長による二酸化炭素の吸収を通じて大気中の二酸化炭素を減らす役目も果たす。単にエンジン車か電気自動車かというだけでなく、20世紀を通じて石油に依存してきた暮らしや製品を改めて見直すことも、21世紀のものづくりに必要になっていくだろう。

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