この記事をまとめると
■2024年1月にダイハツ・グランマックスほか2台の型式指定の取り消し処分が発表された
■前面衝突試験における衝突時エアバッグ展開の不正が明らかになったため処分が下された
■型式指定とは公道を走るために必要な保安基準を満たしたクルマであることを示す証明だ
型式指定取り消しはかなり重い処分
1月に入り、ダイハツは一連の不祥事に関わる国土交通省からの聴聞を受けた。そしてダイハツは、同社への不利益処分に対し意見はないと回答したと伝えられる。これにより、ダイハツ・グランマックスと、同車両を供給され、自社の車名で売ってきたトヨタ・タウンエース、マツダ・ボンゴの型式指定が取り消されることになった。
公開された型式指定取り消しの理由は、次のとおりである。
型式指定を申請する際に、ダイハツが、オフセットとフルラップの前面衝突試験において、本来は衝突の衝撃を検知してから作動すべきエアバッグの展開を、タイマーを使って作動させるなどの不正を働いたこと。加えて、異なる構造の車両で試験を行ったことなどによる。
それらをわかりやすく解釈すれば、市販するクルマと違う構造の車両で、衝突を検知するセンサーではなくタイマーを使った別の方法でエアバッグの性能を試験し、結果を国土交通省へ申請したことになる。そのため、型式指定の取り消しの厳しい処分となったのだろう。
型式指定とは、公道を走るために必要な保安基準を満たしたクルマであることを示す証明で、これにより、同じ型式指定番号の車種であれば、陸運局へ出向いて審査を受けなくてもナンバープレートを交付され、公道を走ることができる。つまり、型式指定されていない(取り消された)クルマは、一台一台陸運局に出向き、審査を受ける手間をかけなければならなくなる。販売店側は、そのための人員や時間といった手間が増えることになる。
販売台数の多い量産市販車を、短い納期で消費者が手に入れられる背景に、型式指定という決まりがある。自動車メーカーが新車を開発したときは、併せて型式指定を申請し、国土交通省が内容を承認すれば、同じ型式指定のクルマであればいちいち陸運局へ出向かずに販売できるという仕組みだ。
衝突試験などの安全に関わる内容だけでなく、走行性能などについても基準を満たしていることを自動車メーカーが規定に沿って正しく試験し国土交通省へ申請するという嘘のない取り組みが、新車販売の大前提になっていることを厳しく受け止める必要がある。型式指定とは、それほど重要な自動車メーカーの仕事のひとつなのだ。
原価低減の取り組みが度を越したり、優先順位をはき違えたりすれば、今回のような不祥事を招きかねないという戒めである。